ボブおじさん

ゴジラ-1.0のボブおじさんのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
4.3
これは怪獣パニック映画の皮を被った反戦映画だ‼︎

問題 : 本作に出演しているキャストのうち、世界で最も有名なのは?

答え : もちろんゴジラです😅

本作出演者に限らず、ゴジラは渡辺謙や真田広之、そしてあの三船敏郎よりも有名な日本が生んだ最大のスターだろう。

そのゴジラの名を借りて、監督の山崎貴が伝えたいことをスクリーンの上に再現した本作は、全米で公開されることも含めて考えると、ある意味〝スーパースター〟の正しい使い方だったのかもしれない。

1954年に初めて姿を現して以来、日本のみならず世界中を魅了し、衝撃を与え続けてきた怪獣「ゴジラ」の70周年記念作品。

日本のVFXの第一人者である山崎貴監督が、現在の日本で実現可能な最大級の迫力で体験させる劇場鑑賞大前提の〝怪獣パニック映画〟である。

だが、意外にもこの映画の主役はゴジラではない。もちろん監督得意のVFXを駆使して描いたゴジラは、間違いなくこれまでで最も強大で凶暴なのだが、映画の主人公は、神木隆之介演じる特攻隊からの帰還兵 敷島だ。

戦争で死ねなかった、いや、死への恐怖から生きることを自分で選んだ敷島は、仲間を見捨てて帰って来たことを恥じ、罪悪感に苛まれている。

〝自分には幸せになる資格はない〟と思っており、戦争孤児を連れた典子という若い女性と成り行きで同居しているが、おそらくこの2人は結ばれていないだろう。

敗戦で何もかも失いゼロになった日本にゴジラが追い討ちをかけ、日本はゼロからマイナスになる。自分の中での戦争が、まだ終わっていなかった敷島は、敢えて危険な仕事を選び、稼いだ金で母娘を養い、辛うじて精神のバランスを保っている。

だが、2度に渡りゴジラに地獄を見させられた敷島は、遂にこのゴジラの中にこそ自分の死に場所があることを見つける。

神木隆之介は、子役の時から上手い役者だったが、本作での演技は神がかっている。破壊獣ゴジラにより同居する典子をも奪われ、茫然自失の後、感情が爆発するところや、戦闘機に乗り遂にゴジラとの最終決戦へと向かうシーンの演技などは、出色だ。

ゴジラ映画にも関わらず、実はこの映画ゴジラがいなくても成り立つ話しだ。

ゴジラは、人知が及ばぬものの象徴で、地震や津波や疫病に置き換えることもできる。逆に言えば、ゴジラは、自然災害と同じ位のインパクトがある、抗うことのできない〝恐怖そのもの〟と言うこともできる。

クライマックスでは、伊福部昭による、お馴染みのゴジラのテーマ曲が流れ胸が高まる。国のために死ねなかった敷島は、自らの意思で愛する者たちの為に、自分の命を捧げることを決意する。


戦争で犠牲になった彼らは、いったい誰のために戦ったのだろう。国や大義のために犠牲にして良い命など一つもない。

たとえそれが死んでいった者たちに対して報いる為でも……。
たとえそれが愛する者たちを命懸けで守る為でも……。

辛くても、悲しくても〝抗って生きろ〟最新のVFXやゴジラという手段を使い表現した山崎貴監督の真のメッセージを受け止めた。



〈余談ですが〉
ネタバレになるので詳しくは書かないが、多くの方が指摘している通り、この映画の中には、第1作目の「ゴジラ」へのオマージュが、随所に描かれています。

同時にいくつかの別の映画に対するオマージュの様なシーンも散りばめられている様に感じたので思いつくままに。

ジュラシック・パーク
ジョーズ
タイタニック
ダンケルク
永遠の0

他にもあったかもしれませんが…。