ぜにげば

ゴジラ-1.0のぜにげばのネタバレレビュー・内容・結末

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

和製ゴジラを劇場で見るのは人生初。
IMAXで見る価値がありすぎる作品だった。


まず最初に、僕にとってのゴジラとは何か、を説明しておかないと語れない思う。
初代から観てるのか、昭和、平成、ミレニアム、シン・ゴジラしか見てない人、色々いるだろう。
観初めたタイミングや時代感、個人の価値観などで捉え方も違う。
核の象徴と捉えている人もいれば、英霊と捉えている人、よく分からない何かと捉えている人、怪獣とモンスターの区別を付けていない人、他にも色んな人がいる。
かく言う僕はゴジラ含め怪獣が抜け落ちた世代で、ポケモンシンオウ三部作やモンスターハンター、仮面ライダー電王等で怪獣的なものやモンスター的なもの、特撮的なものを摂取していた。
そして、シン・ゴジラもリアルタイムで見ないまま、遅れてこれまでのゴジラを全て一気見した。
そんな僕が出した“ゴジラとは”の結論は、“ゴジラとは、なんてない”、だった。
短期間でガメラを含めたら50近い?作品を見たことで、自分にとってのゴジラが固まる間もなくゴジラの設定が変わり続けた。
好き嫌いはあれど特別に思い入れのある作品はなく、こだわりも生まれなかった。
あるとしたら、ジュラシックパーク等のモンスターと怪獣は別物だという認識くらい。
そんな僕にとって今作のゴジラは、ゴジラだった。
(仰々しく語り始める意味なかったかもしれないけど多分大切なこと)

今作に対する所感としては、めっちゃくちゃ面白いが残念な所もあると言った感じ。
良いところから。
まず銀座のシーン、あれはやばい。凄まじい。
ゴジラのテーマが流れると同時に銀座を破壊し始めた所から典子が吹き飛ばされる所まで、「あ、これ人生で一番かも」とすら思った。
本当に凄まじかった。
劇場のど真ん中、視野一杯の画面、でかい音!伊福部昭のゴジラのテーマ!!美しい当時の銀座!!!
やばい!!!!
ゴジラの名シーンは街並みが決めるのかもしれないと思った。
戦後まもない銀座ってチョイスが何故か分からないけど良すぎた。
香港を闊歩するバーニングゴジラを超えたかもしれない。
ここに辿りつくまでもめっちゃいい。典子が銀座で働きますと言って、その後進行方向が銀座だと分かり張り詰める感じも完璧。

他だと熱線も堪らなくかっこよかった。
ネタ切れの中どうするのかと思ってたけど、背びれが浮き出るとは…。
最後にガシャン!と元に戻るのがめちゃくちゃ気持ちいいし、熱線の威力が笑えないくらい高いのも良かった。

あと、木造船を追いかけてくるゴジラの顔が最高だった。めっちゃ可愛いしめっちゃかっこいいしめっちゃ怖い。
顔半分出して頑張って泳いでる。
可愛い。頑張れ。可愛い。
イタチとかカワウソみたいな顔してて可愛かった。
「きしゃー」ってこっち睨んでた。可愛い。


ただ数日経った今、良かった所を他に思い出してと言われても正直これくらいしか思い浮かばない。
震電から見たゴジラがちょっとミニチュア感あって良かったくらいかな。
良いところは強烈に、これまでのゴジラの中でも一番じゃないかと思う程に、なんなら映画の中でも一番じゃないかと思う程に良い。
だがしかし、少ない。
少ないのか悪い所が多いのか、良い所が良すぎて他の記憶が消し飛んだのか、分からない。
まあ多分全部だ。


こっからは不満を書いていく。
まずセリフの質が低い!非常に残念。
全体的に漂う説明ゼリフ感というか臭さというか古さというか、めちゃくちゃ冷める。
もっとコッテコテの古さなら、それこそ寅さんくらいの感じなら逆に時代感ともマッチして良かった気するのになぁ…。
ただ古臭いだけじゃなくて意味不明なセリフもある。
序盤の「偽善者ぶって」ってセリフ。
どういう意味だ!?!?わけがわからない。なんか他の作品でも全く同じセリフがあった気がするんだけど、セリフの意味が理解できない。
善人ぶってる人を揶揄して言うのが偽善者でしょ?じゃあ偽善者ぶってるって何だよ。
皮肉でそいつに「善者」って言うのか?価値観周りすぎだろ。
偽善者ぶるやつなんていねえよこの世に。
まあいるとしたら、生粋の善人なのに「自分の利益のためだから」って“偽善者ぶる”って感じか?
ダメだ頭おかしくなる。
少なくともあの時の敷島が生粋の善人かと言われたら、嘘ついて逃げてゴジラも撃てなかった奴だから、善か悪か偽善か偽悪かとかの尺度じゃないな。
やっぱり変なセリフだ。
そしてそもそも偽善者ってこの時代の人がそういう使い方するのか?
無茶苦茶だ。冷める。本当に残念。
「ダメージ」も冷めた。
言うか?ダメージ。絶対言わないと思うけどな。

あと、ゴジラが怪獣というよりモンスター寄りだったのが残念。
最初に「今作のゴジラはゴジラだった」って述べたけど、あくまでもそれは僕が寛容なだけであって、演出的にはモンスターだった。
まあ冒頭の島のシーンはわざとモンスターっぽく描いてる気はする。
ジュラシックパークのティラノっぽさというか、ファイナルウォーズの呼び方で言うジラっぽさをわざとやってた。
シン・ゴジラに影響されて進化(変態)をさせたかったんだろう。
ただ典子が電車から宙ぶらりんになるシーンとかは本当にモンスターぽいというか、レジェゴジ感が強かった。
人間にスポット当てすぎだし、最近ミッションインポッシブルで見たぞ。
落下して着水するまでの思ったより早くて違和感。
もう少しなんというか、上手く言えないけど、国産のゴジラなんだから、あとほんの少しだけ怪獣に寄せて欲しい。寛容な自分ですら少し気になる。


ていうか、触れたように他作品の真似事っぽいシーンと展開が多いのが残念。
ゴジラの造形も含め、やっぱりレジェゴジとシン・ゴジラに影響されすぎてる。
海神作戦とかは確かにかっこいいけど、そこまでシン・ゴジラに寄せるともうそれってゴジラじゃなくて庵野秀明とかエヴァの方に言っちゃってるからなぁ。
海神って名前の通り、クライマックスが海なのも残念。
まあ作戦自体はワクワクするし、姿が見えないからこその怖さみたいなものはあったけど、クライマックスがそれか、うーん悪くないけど…うーん…って感じだった。

ストーリー展開とが読めすぎるのも如何なものかなと思う。
「生きなきゃ」は正しいし筋通りまくってるけど、最後の熱線で死なないのもバレバレ、特攻しないのもバレバレ、典子もやっぱり生きてる。
流石に生温いよ。
しかも何?あの特攻までの間。いくらなんでも下手すぎでしょう。
見てて「長くね?」が1回、「長いな…」が1回、「いやほんとに長くね?」が1回の計3回喉元まで来たよ。
何とか劇場のマナーを守らなきゃの一心で踏みとどまったけどまじで長すぎた。
敷島が来る以外無いのに台無しですよ。
劇場のみんなよく踏みとどまったな。
スポーツ選手かお笑い芸人が劇場にいたらあの静寂はなかっただろう。

まあ典子が生きてるやつに関してはG細胞によって再生したってことだろうから、今後の展開次第では死ぬより残酷な事が待ち受けてるかもしれないし、高尚なものになってたゴジラが大衆向けの毎年続いていく作品に戻るきっかけになるなら天晴れではある。
浜辺美波版ビオランテとか見たい。
ただ首元を見るまでのただ助かっただけの可能性があるあの数秒はまじで生温すぎて萎えた。
シリアスにしたいのか親子で楽しめる作品にしたいのかどっちつかずな感じというか、支離滅裂に感じたなぁ。
今後続いて欲しい気持ちはあるけど、今作に限ってはシリアス全振りして欲しかった。

敷島と典子の関係とかも濁しに濁しまくって、一応セックスをニュアンスで示したのにセリフでセックスしてないって示すし、感情移入とかが難しすぎる。

ゴジラ再上陸まで10日って明言したのに「もう少し待って貰えませんか!?」じゃないのよ。
待つも何も10日!話聞いてたか?
期限は決まってて早くしなきゃ行けないの!
そんで予定より早く上陸しちゃうんかい!
敷島の震電で誘導させる展開を描きたすぎて冷めるよ。

敷島の「戦争が終わってない」感じとかはめっちゃ良かったし、筋も通ってるし、良いところは史上最高レベルに良い。
それなのになぜ、こんなにも不満が残るのか。
想像を超えた上で、想像通り山崎貴だった。


まあ、国産ゴジラが続いていく期待も抱けたし、良かったです。
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