らさぐらむ

ゴジラ-1.0のらさぐらむのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
4.3
敗戦後、焼け野原の東京で0から立ちあがろうとする人々を、再び地獄の底に突き落としたのは「ゴジラ」であった。

記念すべきゴジラ70周年作品にして、日本を代表するVFX・映画監督の山崎貴が描くゴジラ。
山崎貴監督作品の『ドラクエ』が散々な評価だっただけにあまり期待せず鑑賞。
個人的には『シン・ゴジラ』と肩を並べる、いや、それ以上の作品だった。

臭い台詞回し、そうはならんやろの展開などツッコミどころはいろいろあるのだが、ゴジラ作品として抑えるべきところは抑え、ちゃんと興奮するストーリー・映像が描けている、近年のゴジラの中では最も完成度の高い作品だと思った。
VFXの質ではどうしてもハリウッドに遅れをとっているように感じていたが、この作品を観て日本もついにここまで来たかと感動した。最近はハリウッドの超大作も暗いシーンでVFX多用されることが多い印象なのだが、このゴジラはちゃんと見えるし、明るいところでも粗さが目立たない。
舞台設定もいい。下手に現代に置かず、戦後間もない時期の日本とするだけでキャラクターの思想や行動に説得力が増す。おかげで「そこ、なんか論理的におかしくない?」という疑問が出づらい。

日本に遅れて公開が始まったアメリカや世界各国でも絶賛の嵐のようで、レビューサイトを見る限りはほぼ全てのレビューで「今年一番」「大迫力の映像と感動的なストーリー」「映画館で見るべき」などと書かれている。
最近のハリウッド版ゴジラを観て、「これがアメリカ人が好きなゴジラなのかぁ」などと呑気に思っていた私としては驚きが大きい。
だってあたしゃ、でっかい怪獣がプロレスごっこする作品がアメリカ人のお好みだとばかり思っていたよ(ど偏見です)。
戦後日本の、日本人の価値観や生き方というものに焦点を当てつつ、ベースにはちゃんと「ゴジラ哲学」とでもいうようなものが流れているこの作品を、世界の人々が感じ取ってくれることに、なぜか誇らしい気分になったりする(私が作ったわけではないのに)。

言い表せないほどとってもよかった。
映画館でかかっているうちに観に行くべき。

2023-033(020)
らさぐらむ

らさぐらむ