イルーナ

ゴジラ-1.0のイルーナのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
4.5
日本が世界に誇る怪獣映画・ゴジラシリーズ。
本作はゴジラ生誕70周年記念作品というだけでなく、日本映画で初めてアカデミー視覚効果賞を受賞したという、日本映画史に残る金字塔を打ち立てた作品。
三振(ドラゴンクエスト・ユアストーリー)かホームラン(ALWAYS三丁目の夕日)のイメージが強かった山崎貴監督ですが、とんでもない偉業を残してしまいました。
それだけに特撮技術に関する逸話が面白く、会社のPCより若手社員の自作PCがはるかに高性能で、波の描写は彼の趣味の産物だった。
何より、ハリウッドのアクション大作の1/20以下の予算(約1600万ドル!)で製作されたというのは衝撃的。
ハリウッド大作でなくてもこれだけ素晴らしいものを作れる!だけでなく、いかにハリウッドが無駄の多い作り方をしているかも浮き彫りになったと言えるかもしれません。

太平洋戦争敗戦で何もかも失い「ゼロ」となった日本。
これから立ち直ろうとしたそのタイミングで破壊神ゴジラが現れ、「ゼロからマイナス」の地獄絵図が繰り広げられる。
終戦後の瓦礫だらけの状態から少しずつ復興していく作りこみは圧巻ですが、それら全てゴジラによって破壊されていく。
このゴジラ、放射熱線を出す時に背びれが青く光りながらジャキンジャキンと伸びてくる演出がカッコいい!
倒された後の、まるで建物が崩落するようにボロボロと崩れていく姿も異様。生物らしさと無機物っぽさが融合した感じ、というか。

そしてこれは戦争を「生き延びてしまった」者たちのドラマ。
「戦って死ぬ」ことが美徳とされた時代で「生き延びてしまった」者たちが「生きるために」ゴジラと戦う姿は、ベタながら熱いです。
特攻という役目から逃げ、ゴジラからも一度逃げ罪悪感を抱えていた神木隆之介が段々と吹っ切れていく演技なんか鬼気迫るものがある。
周りを固める人々も、皆トラウマや罪悪感を抱えているだけでいい人ばかりだったのも印象的。
リアルでは試作機だけで終わった震電や、監督がどうしても出したかったという重巡洋艦高雄、海神作戦の4隻の駆逐艦(雪風・響・夕風・欅)の関係性とか、このこだわりはミリオタだった父が生きてたら喜んだんだろうな……

余談ですが、金曜ロードショーで観ている最中、よりにもよってクライマックスで地震速報が入ったのにはビビりました。
まさかこんな所でリアルとシンクロするなんて……
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