たかちゃん

ソフト/クワイエットのたかちゃんのレビュー・感想・評価

ソフト/クワイエット(2022年製作の映画)
4.3
92分ワンショット撮影のヘイトクライム・スリラー。全編ワンショットという手法は、最近では珍しくないが、本作も「リアルタイム・スリラー」と謳っている。しかし、どこかおかしい。
だって、冒頭の、午後の放課後の校庭で始まり、白人至上主義者の集会、食料品店、夕方のアジア系姉妹の邸宅への侵入、ラストの深夜の湖。
どう考えても92分で収まる時間の流れではない。でもワンショットだ。ワンショットのように、巧妙に繋いでいる(ヒッチコックの『ロープ』のように)としか思えない、トリッキーな作品なのだ。
本作では、白人至上主義の女たちが、自分たちより恵まれた生活をしているアジア系姉妹の屋敷に乗り込み、嫉妬による残酷な暴行を加え、取り返しのつかない結果を招くシーンに既視感を覚えた。そう、ミヒャエル・ハネケの『ファニーゲーム』だ。暴行シーンの前にある、彼女たちの集会での差別発言の数々も凄まじい。本作は女性監督ベス・デ・アラウージョの初監督で、脚本も手掛けているが、その差別発言のリアルな内容は監督自身の被差別体験が活きているのかもしれない。
本作は、観ていて、居心地が悪く、後味もよろしくない。しかし、一時たりとも目が離せないのは怖いもの見たさなのかもしれない。ショックシーンの連続のようなホラーではなく、正常なモラルに揺さぶりをかけるスリラーである。
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