郊外の幼稚園に勤めるエミリーは、「アーリア人団結をめざす娘たち」という白人至上主義グループを結成する。
教会の談話室で開かれた初会合には、食料品店経営のキム、会社員のマージョリー、元受刑者のレスリーなど多文化主義や多様性を重んじる現代の風潮に不満を抱える6人の女性が集まる。
日頃の鬱憤や過激な思想を共有して盛りあがった彼女たちは2次会のためエミリーの家へ向かうが、その途中に立ち寄った食料品店でアジア系移民のアンたち姉妹と口論になってしまう。
腹を立てたエミリーたちは、悪戯半分でアンたち姉妹の家を荒らしに行くが……。
マイノリティへの偏見を持つ白人女性たちがあるトラブルをきっかけに取り返しのつかない事態に陥っていく様子を全編ワンショット&リアルタイム進行で描いたクライムスリラー。
ベス・デ・アラウージョ監督いわく、本作のインスピレーションの元となったのは2020年にニューヨークのセントラルパークで起きた“ある事件”。
これはその公園でひとりのアフリカ系男性がバードウォッチングをしていたところ、エイミー・クーパーという白人女性が犬をリードに繋げずに散歩している姿を見かけ、「リードをつけてください」と注意した。
ところがその注意された白人女性はその場で「黒人に脅されている」と警察に通報した。
この一件は動画で撮影されており、その動画は瞬く間にアメリカで注目され、人種差別の典型的な事例として話題になった。
また白人女性たちが主体となっている人種差別団体は、珍しくない。
LGBTやワクチン対策や移民政策に「自分たちの子供を守ろう」という名目で反対している「マムズ・フォー・リバティ」は、母親で構成された極右のヘイトグループ。
参加者は、女子会で自分の周りのクズ男の愚痴を吐くような気軽なノリで、「自分よりも早く入社した移民が、自分よりも早く管理職に昇進した」などなどの自分が直面している不遇な状況を外国人移民や他文化主義者などのせいにして愚痴を吐き、「アメリカを取り戻せ!」などと気勢を上げ現実の憂さ晴らしの為にヘイトクライムに手を染めてしまう。
アメリカを蝕む「ヘイトクライム」の実態を、加害者目線でモキュメンタリーとリアルタイムサスペンスのスタイルで描くことで、自分の不遇や不幸を外国人移民など弱い立場の人間に浅い思慮で簡単に押し付けて憎悪をぶつけるヘイトグループの参加者の考えの浅さや仲間意識や軽い集団心理のノリでヘイトクライムに手を染める恐ろしさが、リアルに描かれている。
さらに、ヘイトグループを結成したエミリーが、不妊治療が上手くいかず夫婦関係や絵本を書く夢も上手くいかず、伝統的な家庭を築きたい理想が実現出来ない憤懣を自分が身につけた伝統的な価値観や伝統的価値観を重んじエミリーに押し付ける白人社会に向けず社会的に弱い立場の外国人移民などに向けてしまうことの救われなさが、よりヘイトクライムの根の深さを感じて、ヘイトクライムの闇を抉り出すリアルタイムサスペンスホラー映画。