シネラー

名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)のシネラーのレビュー・感想・評価

4.5
劇場版最新作となる
本作を公開初日のレイトショーで鑑賞。
灰原哀をメインに捉えた上で、
黒の組織をはじめとする
オールスターな内容で期待値も高かったが、
その期待値を軽々と上回る素晴らしい
ファンの為の歴代最高傑作な一作だった。

日本で建造されたインターポール施設
の新システムを狙う黒の組織が
裏切者シェリーが灰原である事に気づき、
灰原を巡ってコナンと組織の激しい
攻防戦が繰り広げられていく
サスペンス・アクションとして
盛り沢山な内容となっており、
コナンの最終章じゃないのかと錯覚する
位に盛り上がりしかない映画だった。
個人的に黒の組織に関しては、
原作及びアニメに過去の劇場版では
恐怖感よりも抜け目が勝ってしまう
雑な犯罪組織という印象が強かったが、
本作では人を利用して脅す上に仲間内
にも容赦ない組織の非情さが際立っており、
シリーズで最も組織に畏怖する内容で
全編に渡る緊張感も凄まじかった。
対するコナン側に関しても、
いつもはコメディ的な阿笠博士が
組織の車とカーチェイスを繰り広げ、
組織にスパイとして潜入する
水無怜奈や安室透からは手引きを受け、
FBIの赤井秀一とは組織の潜水艦に
対して共同作戦を行うといった具合に、
正に総力戦と言える状況下で
緊迫感と胸を熱くさせる展開の連続で
それぞれが活躍していて素晴らしかった。
組織との対決が主軸となりながらも、
本作に登場する組織のピンガが起こす
殺人事件をコナンらしく"眠りの小五郎"
で追いつめていく推理要素には
懐かしさが感じられ、
そのピンガの意外性や思惑といった
キャラクター描写も印象的だった。
しかしながら、
組織側で一番好きなベルモットの活躍が
個人的には最高に嬉しかった。

本作のメインヒロインとなる灰原だが、
自身の正体が発覚した事で
コナン達との別れを覚悟した上での
やり取り一つ一つが切なく、
コナンに対しての想いが
終始描かれているのが良かった。
又、自身がコナン達と出会い
変わる事ができた経験が、
本作では逆に灰原が自身と所縁のある
人物に影響を与えるという展開もあり、
これだけの盛り沢山な内容の中で
シリーズを重ねたからこその
キャラクターの成長を描いているのも
素晴らしかった。
物語のメインヒロインが灰原となるだけに、
近年の映画では影の薄い扱い
となっていた蘭が尚更気掛かりだったが、
しっかり本作は組織とのアクションに
コナンと灰原を心配して最後まで
現場に駆けつける役回りとなっており、
結末での灰原とのやり取りも含めて
存在感を示していて良かった。

気になる点を挙げるとすれば、
前年の"ハロウィンの花嫁"が
コナンのファンではないライト層でも
楽しめる上に親切な内容だったのに対し、
本作はコアなコナンファンに向けての
原作及びアニメから回想等も多い為、
その点はファン映画故の難点と言えるだろう。
又、インターポールの
監視システムに関して言えば、
監視社会に関する警鐘としての
言及があればもっと良いと思った。
加えて、組織の潜水艦のソナー回避や
捕まえた捕虜に対する守備が手薄な点は、
相変わらず隙ありな組織だと思った。

「まさかここまでとはな」
と言わんばかりの傑作であり、
長年に渡って原作・アニメ・映画を
追っている身ではあるが、
コナン映画で涙したのは本作が初だった。
レイトショーでなければ
続けて鑑賞したかった位に、
何回も観たいと思わせるコナン映画だった。
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