垂直落下式サミング

名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)の垂直落下式サミングのネタバレレビュー・内容・結末

4.6

このレビューはネタバレを含みます

漫画本編のスピンオフ劇場版というよりは、けっこう差し迫った内容(後述)の劇場版なので、原作コナン弱者はパンフレット購入必須。これで黒の組織内部の力関係とか潜入捜査官とか、複雑な人間関係がスッキリわかったのでおすすめ!
舞台は八丈島。パシフィック・ブイなる施設が海中に建造されており、そこで施設内部で殺人事件が発生して、さらにはエンジニアのひとりが誘拐されてしまうところから物語がはじまる。
過去の顔写真から、その人物の現在の風体を予測する老若認証システムが開発され、それを防犯カメラ映像のデータベースとジョイントさせることで、犯罪抑止に繋げようとするのだが、その裏に黒の組織の影が…。
犯罪者たちを追い詰めるはずの老若認証システムは、素性を隠して生活しているコナンや灰原の正体までも割り出してしまう諸刃のテクノロジー。灰原とシェリーが結び付いてしまって…。ついに哀ちゃんの面が割れるドキドキっ!劇場版で、ここまでやっちゃうんだ!?
灰原が黒の組織に拐われるシーンの畳み掛けが、すごくドキドキする。夜中のホテルの部屋に押し入られて、手際よく誘拐されてしまう灰原、気づいたコナンが追いかけ、蘭もどこからか飛び降りてきて足止めするも、遠くにはスナイパーが!状況が一旦膠着し、隙をつかれて敵が車で逃げていくのを、アガサ博士が必死で追いかけていって、スケボーで別ルートを行くコナンと挟み撃ちにするはずだったのだが、なんと海から潜水艦がっ…!アクションとしてスッゲーおもしろい!
悪の組織が誘拐するだけって詰めが甘いような気がするけど、1巻から出てくる長髪のジンは、さすがに子分とはひと味違う極悪人。疑いがかかった次の瞬間、躊躇なく消しに来るタイプだから、いよいよコイツがやって来ますよとなると、ストーリーが引き締まったような気がした。
望みのモノが手に入んないなら、殺してしまえホトトギス。魚雷発射管のレバー引いちゃう。おめえ、さてはネズミかぁ?!くそシステムじゃねえか!ジンって、こんなチンピラの言葉遣いするんだね。
時代を感じたのは、コナンくんが江戸川コナンと工藤新一でスマホ2台持ちなところ。なるほど、昔みたいに公衆電話からじゃなくていいから便利。これによって、赤井さんと安室さんの中継役となる。小道具の活かしかたがうまいなー。
黒の組織さんは、内部に裏切り者やスパイが自由に出入り可能状態で、どんどん格落してきたから、本作では再び恐ろしさの面が強調されていたのがよかった。
劇場版でも、なんか格好よく登場してから、なんか雰囲気でやられていく役まわりばっかりだったから、今回しっかりと怖い組織であることが印象づけられて、舐められっぱなしだったのが威厳を取り戻したと思う。
まあ、いつもの大味は健在。いちばんのツッコミどころは、常に海水で冷却しなければならないようなスーパーコンピューターをもちいて運用するシステムが、金髪おねえちゃんがノートパソコンをワンタップすると遠隔でハッキングされるところ。どないやねん。インド人もビックリ!
あと、あんなにデカイ標的だったら、赤井さんじゃなくても当てれそうだよね。バズーカぼごーっ!






【ネタバレ!】
ほんでもって、ほんでもって、今回の映画でいちばん大事なのは、ミステリーよりも、サスペンスよりも、アクションよりも、灰原哀ちゃん問題なわけよ!ほのめかすだけだったラブに、答え出しちゃってるじゃん!ヤバイよ!大事件だ!おっさん大興奮!
コナンを助けにきた哀ちゃんが人工呼吸して、ふたりで水面を目指す。手を繋いで海上に上がっていく映像もキレイでロマンチック…。心の声で「どうしてそんな顔ができるのよ…。」って言い出したところで変な声出ちゃって、もうキュンキュンしすぎて手のひらで口おさえながらみてた(乙女)
新一と蘭はもう運命のやつで結ばれちゃってるけど、哀ちゃんとコナンだってこれまでの積み重ねで、このふたりしか共有していない世界があって、アガサ博士以外にホンネを話せるのはお互いにコイツだけって、ふたりのふたりしかない関係が構築されちゃってるのであって、もうさ、こんなん夫婦じゃん、好きじゃん、LOVEじゃん!そこへ来てこれは…ッ!
そのあとのコナンが、噛み合わない心の声でラリーすんのもニクいーっ!こいつ知らねえんでやんのチューされたことっ!もう!哀ちゃんのこと、しっかり守れよ!たのむぞ!
これまで、ほんの少しだけ匂わせるだけだった彼女の健気な好意が、今回リアルな情念になっちゃった。超事件だろ。番外編が正史に介入してるじゃん!?
こんなことしたら、不可侵だった工藤新一と毛利蘭のメインカップリングに、三角関係が発生しちゃうじゃないですか!ホントにいいの!?いいんですかっ、青山センセイ!?
怪盗キッドとかみたいな、たまに出てくるゲストキャラになら、この役割させても軽い扱いで済むと思うんだけど、哀ちゃんはほぼレギュラーキャラだし、その彼女の本心を見せちゃうのは重みが違うじゃん!受け止めらんない!
コナンのメディア作品は、ほとんどすべて原作者の青山剛昌先生が目を通しているとはいえ、ここまで劇場版で初出しのキャラクターの内面に踏み込んでんのは初なんじゃないかな。
原作ファンの人どう思ってるんだろう。僕は別に誰と誰がくっ付こうがいいんだけど、コナンをずっと追いかけ続けている層は、笑って過ませらんないくらいの大事件でしょ。真実はいつもひとつだとばかりに、約束された幼馴染みカップリング以外でも、こんなに楽しめるんだね。これが、ちゅ多様性ってわけ!マジのマジで超重大事件でやすぜ兄貴ィ!素晴らしかったです。