ブタブタ

水は海に向かって流れるのブタブタのレビュー・感想・評価

水は海に向かって流れる(2023年製作の映画)
1.0
この監督、豚を食うとか食わないとかの監督じゃないの。
フィルマークスでその錚々たるフィルモグラフィ見たら一本も見てないや(笑)
恐らくはこの監督「好きな漫画の映画化決定して喜んだのも束の間、監督名見てガッカリする監督」の個人的ベスト3に入る。
(因みに一位は英勉。福田雄一が撮るのは映画でなくゴミなので圏外)

この映画、一言で云えばスゲーつまんない『ハチミツとクローバー』とか『めぞん一刻』をずっと見せられてるみたいな(笑)
田島列島『水は海に向かって流れる』は間違いなく傑作漫画だけど。
前の『子供はわかってあげない』も劇場版はダメだったので田島列島作品は実写化に向いてないのかも。
《榊さん》は間違いなく広瀬すずではない事だけは映画化決定!の時点から分かってたけど。

広瀬すずさんはキムタクと同じくスタータイプの役者さん。
何の役やっても広瀬すずでしかないしそれだからこそ価値があると思う。
なのでこの役には絶望的にあってない。

もう兎に角原作の漫画、読んでない人は読んで~としか言いようがない。
この映画の百万倍素晴らしい物が既に完成してるのでこんな映画見る必要はないのかも。
又吉直樹先生がYouTubeで『水は~』の素晴らしさを語ってるので其れ見て原作漫画読めば充分。

榊さんの「私、恋愛しないので」は16歳の時に母親がよその親父(主人公・直達の父親)とW不倫して父親と自分を捨てて出てった事から来て、そこで榊さんの人生はストップしてしまってる。
それは最早それ程重く恋愛って物に絶望仕切ってるって事。
矢張りこの実写映画ではそれ程の絶望感が広瀬すず(あの人は《広瀬すず》で《榊さん》ではないよね~)からは伝わって来ない。
何よりこの映画ではその過去の親同士のW不倫エピソードがそれ程重大な事として扱われてない様な気がするんですけど何で?
それから映画ではほぼカットされてるけど直達の両親は不倫から父親が帰って来て表面上は元サヤに戻ってる様に見えるけど直達の母親も榊さんレベルに絶望してて其れを呑み込んでしまった人。
なので榊さんと直達の母親は言うなれば対の存在で、直達・母は「怒らずに許してしまった」それ故に歪んでしまった榊さんの姿でもある。
なのでその辺全然描いてない映画はやる価値なし。

直達と榊さんが不倫母親に会いに行くイベントは、あの時その場で怒る事も何も出来なかった自分達が改めて「怒る」為のイベントだった。
榊さんの母親の悲劇のヒロインぶりは本当に血が沸騰する程腹立つんだけど、あの原作漫画(もうお前原作だけ読んでろと自分に言いたい)の全ての元凶であるくせに「被害者ヅラ」「弱者ぶり」家にやって来た榊さん&直達に対するまるでホームインベーション映画であるかの様な「今のこの幸せを壊したいならどうぞ」と言う開き直りは最高(最低)で読者全員がこの不倫女を心の底から憎む事が出来る。
坂井真紀ではちょっとそんなに酷い奴感を感じなかった。
アレが斉藤由貴だったら全振りの本当にクズ人間不倫女を演じてくれたのでは。
「あなたも人を好きになったらわかる」って自分のクズさを全部恋愛のせいにするなってのが『水は~』で言いたい事だと思うし、榊さんの「私恋愛しないので」は若い男女がひとつ屋根の下にいたらそれしかする事ないのか?って恋愛恋愛恋愛言ってるキラキラ漫画・映画・創作物に対するメタ的な否定も入ってる。
即ち『水は~』はそういう漫画じゃないって事。

「復讐とか意味無い」論は大嫌い何ですが、『水は~』は自分に対して手酷い傷を負わせた人間を「許さない」「忘れない」上で「解放される」事をやってるのが凄い👏
ラストも他の方も言ってますが原作のこれ以上ないって名場面をやらない。
確かにこの映画の内容だとあのラストに繋がらない。

それから『水は~』の真・ヒロインは榊さんでも泉谷さんでもなく直達の叔父さんである《茂道》なので(笑)
原作だと伸ばしっぱなしの髪に無精髭のムサいおっさんなのに何か妙にセクシーで直達と榊さんの関係に嫉妬してて何やらBL的な匂いもさせている。
なので高良健吾のキャスティングはよかった。
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