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怪物のmoonのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.5
「生まれ変わったかな」

「変わらないよ」「元の通りだよ」

「良かった〜」

この想いが全て‼️ ……💧‬



公開日に観た。でも、色々確かめたくてもう一度観に行った。
本当は もう二度、三度観ないと解らないのかもしれない。でも、今感じてる事を書いてみる。

*諏訪地方に在住の方々、是非ご覧ください!




《‼️注 この先は本当にネタバレになるのでこれから映画を ご覧になられる方は絶対読まないでください》









先日、カンヌ映画祭で 坂元裕二さんが最優秀脚本賞を受賞されたと知る。それは「クィア・パルム」部門という、耳慣れない言葉で、調べてしまった💦

それでも、何が?…と思いながら、座席についた。

見終わって…あぁ!!そうだったのか!
それか!ー。

予告編見ただけだと ホラー?なのか?サスペンスミステリーなのか?と思ってたけど、
繊細で靱やかな人間ドラマだった。

同じ時間軸で起きた事柄が、最初は シングルマザーの早織の視点から、その次は 保利(ほり)先生の視点から、そして、最後に湊(みなと)と依里(より)の立場から描かれて行く…

見事にその視点毎に誘引され、最初は早織に同情し学校や教師への不信が募り、次は保利の視点から見た 同じ出来事が、実は全く違って見えて先生が気の毒になって来る!!そして…真実は…

本当に 騙されてしまった💦というか、見事‼️このような描き方は、「告白」でも湊かなえさんがお書きになられてるけど、この「怪物」では 更に優れたトリック?のようで、感服!!
流石、坂元裕二さん❗️❗️脚本賞は納得だ‼️

「怪物」というタイトルの意味。

それは、この映画の中では、「なるほど」な意味が感じられた。

一つには、立場が違うと、誰もが「怪物」になり得る「見える」ということ。早織から見た怪物は 教師達。教師達から見たら早織は「モンスター(怪物)ペアレンツ」
そして、依里達、子供たちから見たら、星川(中村獅童さん)は「怪物」のように怖い存在。そして星川から見たら、息子こそ「怪物」であった。という…そして、私から見たら、校長(田中裕子さん)も 相当な「怪物」

そして、もう一つの意味は
物事の本質 真実を知らないままに その相手や出来事を自分勝手に 「きっとこうだろう」と決めつける事自体が「怪物」を生み出してしまう…ということなんでは?
この映画も早織の立場から一方的に世界を見たら、めちゃくちゃ先生に怒ってしまう。現実も物事はあらゆる方面から見ないと間違った捉え方をしてしまうんだと改めて思い知らされた。

とても興味深い演出、構成の映画だった。

親、先生視点からの物語を追って行くと次第に「あれ?」「違うのか?」「どういうこと?」と疑問符でいっぱいに…そして、最後に湊と依里の真実に迫って行く…




シングルマザー早織と二人暮らしの湊。
唐突に「お父さんは土をかけられた?」とか、「生まれ変わったかな?」などと母に尋ねる。(あのシーンで「ブラッシュアップライフ」を思い出した😅のは私だけではあるまい)
早織は事実を隠し(でも湊はいつからか?知ってた)、亡き夫を理想の父親として湊に伝え育てて来た。母親として立派だと思う。だから、湊も母が好きで、母の元で良い子でいた…けれど、、
ある日、怪我して帰った息子に理由を聞くと…保利先生に殴られた…と。その後も湊は挙動不審な行動で母を心配させる。
母は何度も学校に出向き、事の真相(先生の暴行)を問いただすも、一向に埒が明かず…遂には学校の記者会見、新聞、週刊誌に載る事態までに事は大きくなる。そして、遂に保利は学校を辞めざるを得なくなる…

湊は苦しんでいた。自分が 母の望んでいる「お父さんのようになれない」事を。
多分、自分はこの先の将来も 女の子を好きになれず…両親のような家庭を作る事は出来ないと…母の期待を裏切ることの辛さと、こんな自分をどうにかしたい気持ち(生まれ変わりたい)と、依里を好きだという気持ちを 誰にも悟られたくない気持ちとの葛藤と 混乱…の中、湊は嘘を付くしか無かったんだろう…「先生に殴られた、ブタの脳と言われた」などと…
依里との関係を悟られたくないが為に!
走ってる車から飛び降りたのは母の期待が重く、いたたまれなかったのと、依里からの着信に応えたくて、でも、母には聞かれたくなくて…
切なかった。病院の帰りに見せた湊の突然の苛立ち…解ってから観ると、本当に可哀想で…哀しくて。テレビでおネエ?が映ってるの…どんな気持ちで見てたんだろう…




依里

最初、早織視点では依里は飄々としてて 湊の仲良い友達。でも、湊の靴を片方だけ?借りてる?不思議な子。
先生視点からは、誰かに嫌がらせ(虐め)を受けて上履きをゴミ箱に捨てられていて、トイレにも閉じ込められ、湊に掴み合いの喧嘩をされてる…保利は依里は湊に虐めを受けてると判断。それでも、その事を怒るでもなく…平然としてる依里。
掴み所無く 親に会いに行くも…その親もどこか…変だ。

実は、依里の父親だけが、依里の本質を知りながら それを認めずに「バケモノ(怪物)」だと決めつけ、体罰を日常的に…そして、「お前の脳はブタと入れ替わってる」などの暴言を浴びせていた…事がラスト近くに分かって来る。

依里の服装がいつもサロペットなのが、似合って可愛いけど、あの年齢の子にしてはちょっと違和感があった。でも、湊が浴槽で折檻されてる依里を助け出した時に腰に痛々しい暴行の跡…を見た時、サロペットは、依里がソレを隠す為だったんじゃ?ないか?と …切ない…
そして、何をされようとも、言われようとも平静でニコニコしてる依里は…
実は「連想ゲーム?」の「ナマケモノ」のように、「敵」に対して逆らう事をせず、何も無かったように振る舞う事で…自身を保って居たのかな…と思うとイジらしくて哀しかった。
でも、依里は強い子だと思う。
親から虐待されようが、ブタの脳と言われようが、「病気」と言われようが、自身の「思い=湊が好き」を受け入れてた。でも、本当は…女の子を好きになる男の子に生まれ変わりたい…という気持ちも…?
いや、それは父親から「病気」だと決めつけられてたからなのかも…

ただ、そんな何をされても怒らない依里は父親からも同級生(特に男の子達)には ちょっと不気味?で「怪物」に思えたかも…だから余計に虐めの対象になってしまったのか…



湊と依里

二人の秘密基地 錆びて朽ちた古い電車の中で
宇宙空間?を作って行く様が微笑ましかった。そして「怪物だ〜れダ?」ゲームも。
依里が湊に「ナマケモノ」のヒントを出した時、湊が「僕は依里くんですか?(笑)」と…笑いながら言う湊…も切なかったかもな…

この「怪物ゲーム」相手の絵カードを見ながらヒントを出し合い、自分のカードを当てるゲームだ。何故 「怪物」なのか。
このネーミングは 何も分からないうちは相手が「怪物」のごとく「未知」で「怖い」物として感じられる?という意味なんだろうか?
これは 映画のテーマにも繋がっているのか。


ある日、転校するかもしれない…」と言う依里。”病気”が治ったら、お母さんが帰って来ると話す。「嫌だよ!寂しいよ」と依里に訴える湊…と依里が湊を抱きしめる、次の瞬間 ハッと依里の手を振り払う湊。
「大丈夫。僕もなった事あるもん…」
このシーンで、ハッキリ彼らが単なる仲良し(少年の友情)ではないことが、解った。
それで、それまで描かれて来た事の意味がハッキリ解って来る!!凄い脚本だ。

ここまで書いて、作品の時系列と内容がゴッチャになって来て悩む🤔
もう一度以上観ないと…でも、とりあえず、感じた、推察した事を書いて行く。


依里は死んだ子猫を埋めてやらないと「生まれ変われないンだって…」と言って土に埋め葉っぱを被せ火を着け、埋葬する。その出来事は ずっと湊の心に燻り続けて…「お父さん、生まれ変わったかな?」と…そして、母には聞かれない小声で仏壇に向かい「なぜ 生まれたの?」と呟く…湊の葛藤が切なかった。

どうにかしたい気持ちと、どうにもならない現実の中、保利先生から詰め寄られ逃げ出し、階段から落ちる湊。

学校に駆けつける母が もしや、湊は飛び降りたんじゃ…?!!と「やめて…やめて」と怖々、教室に入って行く様は…コチラもドキドキした。

ベランダで一人「ごめんなさい」と謝る湊に校長が「誰に謝ったの?」「嘘を着いたから」「保利先生は悪くない」の返事に「私も…だ」と言う校長。
え?! 本当に事故は校長が?…では真相は…校長とその夫との会話の限りでは、分からなかったけど…

湊が何故か校長には心を開き
好きなコがいる…でも、誰にも言えない。と。何故なら、誰かを不幸にするから(この台詞は聞き取り辛く💦正確で無いので、この解釈で合っているか不明…)
すると校長「しょうもない、しょうもない!誰か一人が幸せなのを幸せとは言わない。皆が幸せなのが幸せなんだよ」と。

その言葉に湊は何を感じたんだろう…思い切りトロンボーンを吹く事で何かが吹っ切れた…のか…自分も幸せにならなければ皆も幸せになれない。つまり、依里を好きな自分を肯定して良いと気付いたのかも…


よくは解らないけれど、
湊は依里の元に走った。けれど、星川(父親)と共に現れた依里は「好きな子が出来た。もう心配しないで」と言ってドアが閉まる。帰りかけた湊に「嘘だよ!」とドアが開き依里が叫ぶ!も、星川に連れ戻される。翌、嵐の朝、湊は依里の家に向い、折檻されてた依里を助け出し、秘密基地へ…
(依里の元気さにびっくり!子供だから?)

暴風雨の中、カラカラと土砂が崩れる音が…
「出発の音だ❗️」「出発だ」とはしゃぐ二人。

早織と保利が駆けつけた時
その秘密基地は土砂に埋まっていた。
ドアを開けても二人の姿は無く…
多分…息を潜めて、隠れていたんだろう…

そして

二人は電車の下側から外に出て、暗いトンネルを抜け…野原に立つ。
そこで、依里が

「生まれ変わったかな?」と
「そんなのないよ、変わらないよ」と湊。
「なら、良かった♡〜」と依里、
笑顔の二人。

そして、雨上がりの鮮やかな日差しの中、晴れ晴れと草原に駆け出す!

その様は、湊が自身を全肯定出来た瞬間だと思った!苦しみ悩み抜いて、自分は自分で良いと!依里を好きな自分で良いと!
感動した!素晴らしいラスト!

この先が大変かもしれない。
けれど、二人の爽快な笑顔には、しっかりとアイディンティティを確立した少年の強さが感じられた。大丈夫、親や周りにも隠さない!自分は自分だ!と。


この映画の台本が映画館に展示されていた。そこの表紙には「世界は生まれ変われるだろうか」とサブタイトル?が書かれて有った。

映画のテーマ...と思う。「生まれ変わる」のは何か?

土砂に埋もれた電車は、”生まれ変わる”為の「埋葬の儀式」に思えた。

しかし、そこから出て来た(電車は胎内、トンネルは産道のよう)二人は何も変わらなかった。

変わらなくて良いのだ!!
二人が変わるんじゃなくて、周りが世界が変わって行く…それを描く作品だったのではないだろうか?

だから「クィア・パルム」賞。然り。納得。

現在、LGBTQが世界中の老若男女に認知、周知されて来てる。

そんな中、少年、第2次性徴中の思春期の二人を主軸に描いた事で、鑑賞後はとても爽やかな印象を残し、身近な事として捉える事が出来た気がした。

まだ、三度目を観られないが、もう1、2回は観たいと思う。何度観ても、その度 発見や感動が有りそうだ!




素晴らしい脚本だけど、「?」な部分が有る。

依里の作文。湊も見てて、保利先生は気づかないだろう…と面白がって?た作文。
湊と依里の名前が原稿用紙の上一列に並べられた「品種改良」というタイトルの作文…これを読んで二人の名前に気付いた保利は嵐の中、湊の家に行き
「麦野‼️俺が間違ってた!お前は悪くない!ごめん!」と叫んでいたけど…あの作文は映画観てて私は読めなかった。多分、他の方々も…。どんな内容だったのだろう?推測でしかないけれど、二人の名前が並んでいた事で、保利は湊の全ての行動が依里を守る為のものだった事に気付いた?のだろうか?そこだけは、2回観ても分からず、モヤモヤした。
ただ、湊を嵐の中探しに行った早織は まだ 二人の事に気づいてない?ようだが、いつか 保利が二人の事を双方の親に説得?理解させてくれるのを期待出来る気がする。



俳優陣はそれぞれ見応え有って、良かった!特に安藤サクラさんは、湊を心配する表情がほんとにリアルで素晴らしかった。何気ない動き、表情が自然で台詞回しも上手く、「ブラッシュアップライフ」以降 とても注目してる!
瑛太さん、坂元裕二さんは瑛太さんを当て書きするとか!瑛太さんは多くの坂元作品に出演されているけど、どれも違う雰囲気の役柄、ということは、瑛太さんなら坂元さんが想像するキャラクターを思った通りに演じてくれる俳優だという硬い信頼が有るという事!凄い!
田中裕子さんも若い頃から演技派と言われていたけど、校長先生の不思議な存在感は印象的だった!

そして、なんと言っても

二人の子役、子役って言うのが失礼な程、上手くて惹き込まれた!

湊を演じた黒川想矢さん
この役柄は同年代の彼には共感出来たのかは分からないけれど、繊細な少年のやるせない心情をよく表していたと思う!今、中学生だから、これからどんな風に成長して行くのか楽しみ!

依里を演じた柊木陽太(はるた)さん
PICUで初めて見た時、子供らしからぬ上手さで驚いたけど、この映画はそれ以前に撮影されたものだけど依里という ちょっと悲しいけど、しっかりした男の子を体現出来てると感心。

二人共にカンヌに行けたのは素晴らしい経験になっただろう!これから、ますます良い演技を見せてくれることだろう!✨👏✨👏✨

そして、地元のエキストラの子ども達!凄く自然な演技で驚いた😳
この映画に参加出来たのは、生涯の宝物になるだろう!良かったね!



坂元裕二さんは尊敬する脚本家さんの一人。
私が生涯ベスト1だと思っているドラマ「それでも生きてゆく」の脚本家。
今回の「怪物」も「それでも生きてゆく」も偶然に?も私の故郷、諏訪地方で撮影された❗️そして、その両方に瑛太さんも出ている。

是枝監督の初の映像作品を撮られたのが今、私が暮らす伊那地方だったとの事、それも小学校のドキュメンタリーだったそう!そうか!それで子ども達への演出も上手いんだな…で長野県には特別な思いがお有りだそうで、これからも長野県を舞台に映画を撮っていただけると非常に嬉しい!

本当に、映画の中の風景は見覚えのある場所が多く、楽しかった😆諏訪湖を愛する私。諏訪湖の夜景は主に岡谷側からのもので、心の中で そうそう!ここからの夜景が一番なのよ!とニンマリしてしまった😅
桜並木も毎年訪れる素晴らしい場所!「ヒキタさんご懐妊です」にも使われていたけど、本当に嬉しい。
秘密基地の廃線は富士見に実在するらしい💦けど見当が付かない。行ってみたいけど…
廃電車はあそこに組み立てて経年劣化メイクさせたものらしいけど…リアルで素晴らしい👏👏
ロケ地を探すフィルムコミッションて本当に凄いな…憧れる。

坂本龍一さんの音楽は とても心情に沿った
ピアノの調べで心地良かった!



観てからレビューするまで、記憶の整理がごちゃごちゃで、長いばかりの ろくなレビューにはなってなくて、長い時間が掛かってしまった。

もう一度観たら、また感想追記するかも知れません💦



*公開以前のレビューにいいねをくださった皆様 すみません💦一旦レビュー消して書き直しました🙇‍♀️*
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