おさつ

怪物のおさつのネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

早織(安藤サクラ)目線で始まり、子どもの様子、子どもから聞く話だけで形作られる学校や教師に対する違和、ここにまずはほとんどの人が感情移入し共感するだろう。

しかし実態はもっと複雑で、それぞれの目線から事態の側面が紐解かれていくのがとても見応えのあるつくりだった。
人は誰でも、誰かにとっての怪物になりうるー。

湊と依里のラストについてだが、私は死んでしまったと捉えている。

早織と保利先生が土砂に埋まった窓をこじ開けた瞬間、凍りつくようにして一幕が閉じた。
きっとそこには生き埋めになった2人の姿があったのだろう。

一方、湊と依里目線でのそのシーンでは、2人は窓を閉めずにそのまま中を進んで行った。
同じ場所だが、描かれ方が異なる。
そして2人が進んだ先に広がる、現実離れした異様なまでの美しい世界。
そこで2人は会話する。
「生まれ変わったのかな」
「ないよ。もとのままだよ」
案の定2人は元の姿のままそこにいる。
しかしその2人の姿からは、これまでの重い影のようなものが削ぎ落とされ、真に解放されたような、そんな印象を受けた。

早織や保利にとっては地獄のような最後、湊や依里にとってはある種救いとも取れる最後なのかもしれない。

坂本龍一の音楽も、湊や依里の生まれ変わりを彩るような美しさだった。

これは色々な方の解釈、感想を聞いてみたい作品です。

一点だけ…
本当は星5にしたいのですが、東京03ファンとして角田の起用がどうしても作品に馴染まず…
角田の一挙手一投足が普段のコントのそれで、ニュアンスまでぴったりコントと重なってしまい、深刻なシーンでもコントが頭をよぎってしまうのは本当に勿体なかった。
(「立って(小声)」のシーンなんて、豊本が万引きするコントのそれでしかない)
東京03ファンの方には分かってもらえるのではないでしょうか….
人間の心の機微の巧みな表現力が東京03の魅力なので、人間にフォーカスする是枝作品にはある意味で合っている人材なのかもしれないけど…
おさつ

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