DJあおやま

怪物のDJあおやまのネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

監督・是枝裕和×脚本・坂元裕二という、「日本映画ファンの夢か?」と錯覚する組み合わせに期待を膨らませ鑑賞。
ある一連の出来事がそれぞれの視点で描かれ、”怪物とは誰か?”を軸にしつつも思わぬ展開が続く。視点を変えるだけで登場人物の印象がガラリと変わったり、同じ出来事でも見え方が変わったり、そして、複線回収も巧みで、さすがエンタメとしての脚本の完成度に舌を巻く。複雑な人間ドラマの末にたどり着く先は美しく、諏訪のロケーションも相まって晴れやかだった。ただ、2人はどうなってしまたのか?生まれ変わりを示唆しつつも、「そういうのはないと思う」とセリフがあって、ただ、親子の再会を描かず、あまりに美しい自然のなかを駆けていく姿をどう解釈すべきか、もう少し時間がほしい。大人たちの小難しいしがらみや、怪物探ししてしまう面倒な感情、常識から解放されて、これから新たな世界を2人で生きていける、そんな幸福感が画面いっぱいに輝いていた。
キャストは坂元裕二作品ではお馴染みの面々が並び、安藤サクラ、永山瑛太、田中裕子はやっぱり素晴らしい。そして、なんといっても子役2人がすごい。湊役・黒川想矢くんの繊細さと危うさ、依里役・柊木陽太くんのとびきりのキュートさとそれに反して内在する狂気がすごい。この2人の特別な関係性や、ドラマも神秘的というと少し違って筆舌しがたいが、とにかく美しかった。映画前半では大人の目線や、社会派ミステリよろしく人間の醜い感情、めんどくさい部分が全面に出ていたが、視点が湊に移ると、作品はガラリと表情を変えてもはやラブストーリー(というのも無粋か)になっていったのが印象的。
この作品は”怪物は誰か?”という目線で描かれるが、そもそも”怪物”とは何だろう。人間にとって自分の理解できないもの=怪物なのだろうか。同性を愛する気持ちを理解できない人は、同性愛者を怪物と思うかもしれない。自分自身に対してもそうで、自分のなかの理解できない感情や恋心も怪物と思うかもしれない。自分の子供だからといって、なんでも理解できるわけはないが、自分の子供なのにその言動が理解できなかったら、親の目には怪物のように映るかもしれない。そんな怪物たちから解放されたかのような、そのラストシーンには、やっぱりいろいろな感情を寄せてしまう。
DJあおやま

DJあおやま