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怪物のFYのネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

初めて観たのが完成披露試写の5月8日。
その時は完成度の高さを示す緊張感が全編に漂っていて、あらゆるスタッフが完璧な仕事を遂げていることに凄い作品だと讃える一方で、これで終わるのかというあのラストには既視感を感じつつ、ただ余韻は引きずった。

その時には未鑑賞だったが、すぐさま前年のカンヌでグランプリを獲った「クロース」のことを思い出したし、今作は独立賞のパルムクィアを受賞するだろうと確信したので、帰りの電車の中で既に観ていたとある映画ソムリエさんとDMで、その内容のやりとりをしたことを今でも覚えている。

これは好き嫌いはっきりと分かれそうだと思ったし、個人的にはベイビーブローカーよりは好きだけど、万引き家族には及ばないかなという評価。

その後、カンヌ授賞式前の5月21日に再び鑑賞することが叶ったのだが、2回目のほうが理解が進み、ネタバレとされていたクィア性が今作の本筋ではないのかもしれないという仮説の上で反芻してみた。

三幕構成に至るまでで、あの2人以外の誰もが伴侶を失う形になっているという描き方をどう捉えるか。

そして、現代社会に当たり前のように存在するディスコミュニケーションが怪物的な行為を人間にもたらす一方で、愛はどういう形になって、どこに存在しているのかという問い。

それは、田中裕子が語る、(嘘をついても)誰かにしか手に入らないものは幸せとは言わないという台詞と、真実は本人のみぞ知ることで、他人が介入できる領域ではないと皮肉も込めて神聖化した物語の、このふたつの掛け算が創造しているこの世界で、愛が潜む場所を見つけることができるのか、その場所にどうしたら行けるのかという、観るものへの挑戦状にも思えた。
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