MubaoMasato

怪物のMubaoMasatoのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
5.0
「怪物」
視点の違いで人の印象が大きく変わってしまう映画であり、脚本もキャストも化け物級の映画であった。

学校のいじめと先生と親との関係を描くのですが、最初嫌な奴だなと思ったら、見るにつれて大きく印象が変わってしまう。特に先生陣営。
最初はお母さん視点で息子が先生に体罰されているという疑惑で相談しに行ったら、マニュアルのような謝罪定型文で、ずっと不快であった。担当の先生も虫唾が走った。そして、担任視点になると、それが一気に変わり、生徒思いの良い先生であり、自分の正義を貫いていた。だが、その正義はたった一つの怪我で無に帰してしまう。そして、どこまでも堕ちてしまう。彼女も消え、生徒も消え、メディアの晒し物になる。ずっと悲しかった。俺も一歩間違えれば、こうなるなと思いました。

そして、最後の視点は、息子の視点。好きだった親友は男の子。女を愛すのが、男の当たり前の慣習に自分はおかしいのではないかと疑問符を打つ。脳のスキャンも異常なし。(豚の脳は自分のことを言っていたのかなぁ)お母さんも亡き夫の遺言で、息子が結婚するまで頑張るとか担任も男の概念を無意識に押し付ける。浅い所には気付けるけど、深い所には気付かない。

そして、親友はいじめられている。それをどうすべきなのかを分からないから、暴走する。隣の女の子は気づいていただろう。(BLの本がメタファーでしょう)虐めている男は無知の罪を負っている。

そして、それが気づかれないままかと思いきや、校長先生は全て知っていたように感じる。噓の話や写真立ての置き方や女の子に足の引っ掛け不器用の中でも一番の不器用で分かりにくく忠告しながら、守っていたのは校長先生だった。でも、分かり辛いよなこの人の感情。

そして、光り輝くラストシーン。台風の中で二人は電車の中に入って、下に潜って、晴れた線路に二人は渡る何とも綺麗なラストだったが、僕は怖かった。まず、あの台風で急に晴れることは無いし、線路+トンネルの場所には立ち入り禁止の札があったはずなのに、無くなっている。
そして、台風の中でびしゃびしゃの服を着続けていたら、低体温症で生命の危機になるはずなのに体調不良にもなっていない。
だから、この二人は死んでおり、トンネルに渡って、新たな生命に導かれているのだと感じた。(あのトンネルを見たとき、スタンドバイミーを思い出した。これも似ている)

当たり前のように生きていたら、自分が持つ主義や誰かから渡された何者かの感情のせいで、怪物になってしまう。同性愛をエンタメではなく、日常に進ませた作品だと感じる。これは化け物級の映画だわ。
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