リアム

怪物のリアムのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.0
視点が変わると見えてくる真実。思い込みの怖さ。映画ならではの見せ方を最大限高めた脚本が凄い。

嘘や勘違い、不安やストレスなど簡単に人は自分だけの真実を作り上げ互いを追い込み追い込まれてゆく。一度作り上げた虚構の真実はなかなか自身で気づくのは難しく、いとも簡単に誰かを傷つけることは珍しくない。そしてそれはごく自然に日常に潜んでいて、不安で自分自身に問いかける。本当に大丈夫?

いじめを繰り返すクラスメイト、息子を「豚の脳」と言う父親。彼等は論外だが誰もが「怪物」に見えてしまう怖さ。怪物になるのは相手か自身か。多様性の尊重と混沌を極めてゆく世界の中で生きる喜びと苦難をどう受け入れればいいのか。監督の深い問いかけが胸に刺さる。

視点の面白さは映像にも生かされていて、泥まみれのガラスに打ち付ける雨粒や緑の中を疾走するふたりなど心に焼きつく場面も数多い。役者陣の演技は言わずもがな、凄いです。
リアム

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