『万引き家族』の是枝裕和監督と『東京ラブストーリー』の脚本家で知られる坂本裕二が手を組んだ群像劇
シングルマザー、小学校の教師、2人の少年の視点からとある事件の真相に迫っていくサスペンスフルな作品となっています
1人の視点からでは捉えられなかった全体像が、他視点を通すことで明瞭になっていく構成は見事
随所で散りばめられていた点が徐々に線で繋がっていく練られた脚本を、卓越した演出力で魅せる是枝裕和の監督としての力量に脱帽させられました
安藤サクラや永山瑛太はもとより実力のある役者なので驚きは少ないですが、重要な役所を担う黒川想矢と柊木陽太の子役両名の演技力には舌を巻きました
子役の潜在的な魅力を引き出す是枝監督の才能は類い稀なるものだと再認
撮影監督である近藤龍人の仕事も素晴らしいですし、要所で流れる坂本龍一の劇伴も作品に様々な彩りを与えている
役者陣の演技、撮影、音楽といった映像面での満足感だけでも今作は十分に観る価値があります
さらに、坂本裕二による脚本も人の興味を引きつける作り方が上手いなと感嘆させられるものに仕上げられています
示唆的な台詞や小道具の使い方が上手ですし、無駄に説明をし過ぎないバランス感も見事でした
今作を観て鑑賞者は、加害者と被害者が二転三転する物語に、自分の"正しさ"が試されているような感覚を味わうのではないでしょうか
最後のシークエンスの爽快感と残された空白に対する複雑な感情が、エンドロール後も尾を引く傑作です
