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怪物のyumiのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.2


映画「怪物」を観た。
ものごとや出来事は多面的だと思い知らされる。
自分が視えている一面だけで決めつけると、どこかで何かが生じてしまう場合がある。
小さなことで気持ちが変わってしまった時の自分を恥じる。

行ったり来たりしながら、一つ一つの出来事が起こった理由、そのまた奥にある出来事や理由が明かされていく。
脚本家、坂元裕二は「視えていないという視点を出発点として」脚本を書いたそうだ。

何度か響く、二つの管楽器の不協和音が気になって仕方なくて
わかった時には涙が止まらなかった。
この数日間、私はちょうど次女の管楽器を借りて練習していた。
一つは力強い音、もう一つは私のような初心者の音だった。

俳優陣も素晴らしかった。安藤サクラの狂気すら感じる力強い優しさ、永山瑛太の真摯な演技、魔性的な魅力を感じた子役の凄み、静かな田中裕子の強い迫力、教頭役がぴったりだった東京03の角田。

坂本龍一が手がけた最後の映画音楽。
映画館で観られて聴けて良かった。
「トニー滝谷」の音楽がとても好きだったことを思い出して、また観たくなった。

人はきっと、自分の中に、自分でもよくわからない得体の知れないもの、悪いと分かっているけれどどうしようもないもの、逃げたいけれど逃げられないもの、狂気、気持ちの悪いもの、そんなものがあると思う。
それを「怪物」と例えたなら。

自分の中にいる「怪物」を隠したり、隠せなかったり、隠したつもりでも出てきてしまったり。
みんな「怪物」を飼っているんだな、と思って人と接するようにすると、日常は少しだけ変わって視えてくるかもしれないな、と思った。
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