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ありふれた教室のyumiのレビュー・感想・評価

ありふれた教室(2023年製作の映画)
4.0
原題は「職員室」だが、邦題は「ありふれた教室」となっている。部屋自体が違うとはどういうことか、と思って観ていたら、最後に納得がいった気がした。かと言っていい気分にはなれなかったが。

「寛容が大事〜」と歌い、踊っていたドラマを最近観た。しかし、この作品の舞台の学校は「不寛容方式」をとっている。調べると、アメリカで1970年代に学級崩壊などが問題になった際に取られた方式とのこと。不寛容を是とし細かく罰則を定め、それに違反した場合は厳しく処分を行うというもの。

この学校では、盗難事件等があり不穏な空気が漂っていた。学校のその方式に則り、犯人を捜している。主人公カーラは正義感の強い新任教師。問題を解決しようとして取った行動が思わぬ方向に進み、教員、生徒、保護者たちから孤立し、苦しんでいく。次第に加速していくその様子の緊迫感に、こちらまで息が苦しくなるようだった。

カーラのある行動から疑いをかけられた事務職員は、その学校の生徒の母親だった。生徒は母親を守ろうと必死で、ある手段をとる。その時の生徒達の団結力。子どもと思って侮るなかれ。怖かった。

犯人を捜す時、あるいはそれ以外の出来事も、「証明ができないものは単なる主観である」といつつも、はっきりとしていないものを証拠として証明し、それは主観でないと思わせる上層部。それに従うしかない教師達。

不寛容方式の下、犯人を捜したいのなら監視カメラをつけるのも一つの方法だが、それはまた別の観点からは難しく、設置することができない。

解決策がどこにあるのか、何かを犠牲にしないと解決しないことなのか、考えさせられる。
この映画では学校で起こっているが、こういうことはおそらく学校だけでなく、まさにありふれているのだと思った。

教室、職員室、体育館、階段のホール。
誰もいないその場所が映される場面。
何か物言いたげな冷たくて美しい静謐なカットワークに、ドイツらしさを感じた。
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