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PERFECT DAYSのyumiのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.5
この映画の見どころは、主人公の平山さん(観ていると「さん」づけしたくなる)を演じる役所広司の表情そのものだと思う。
ラストシーンに引き込まれない人はいるのだろうか。

平山さんは、微笑み、笑顔、笑っている、どれとも少し違うなんともいえないいい顔をする。
その顔にはじんわりと幸せが宿っている。

平山さんは、家族を持たず、毎日同じような1日を送り、一見孤独に見える。でもそうではないと思った。寂しそうではないし(寧ろ楽しそう)、仕事や目の前のこと、好きなことを大切にして、日々を淡々と生きている。
日々忙しそうに、なにかに振り回されるようにして暮らしている自分を少し恥じる気持ちになった。でも、平山さんの生活を観ていると、不思議とそういう気持ちが浄化されるような気がした。そして単純に、目の前のことをひとつずつ大切にしたいと思った。

この映画の監督は、ドイツ文化を学んだことがある人や映画が好きな人はきっと知っているであろう、ドイツの名匠ヴィム・ヴェンダース。
この映画の舞台は、東京。
ドイツ人が描く東京や日本人にも興味があり、この映画は昨年末からずっと気になっていて、やっと観ることができた。

水曜日の午前中、1番後ろの列はほぼ満席。中高年がほとんどだった。
大学時代にヴェンダースの映画を何本か観たけれど、当時の私にはあまり響かなかった。
中年になり、こういう映画の滋味を夫婦で味わうことができるようになるなんて。
でも、夫に「平山さんみたいに、本当は1人でこういう暮らしがしたいと思いながら観てたでしょう?」と思い切って聞いてみると「うん。」と即答だった。
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