日本映画はそれほど多く見たことがないのであまり当てにならないとは思いますが、今まで見た日本映画で一番良かった。ダントツで良かったです。
シングルマザーの早織は、息子の湊の不可解な言動から担任教師に疑念を抱き、小学校へ事情を聞きに行きます。ですが、校長はじめ学校の対応に納得できず、彼女は次第にいら立ちを募らせていく、という物語です。
最初の2~30分ほどは学校の対応に本当にイライラしました。自分自身、湊と同じ小学5年生の子どもがいるので、より強く早織に共感してしまったかもしれません。
が、これは母親からの視点から語られたパート。
次に担任からの視点から語られ、ここで気付きます。いかに自分は物事を一つの視点からしか見ていなかったのかと。多角的な視点を持つことは大切だと思っていても実際は一方的な視点しか持ち合わせていなかったんだなと反省。
と思っていたら、次は子どもからの視点で物語は進み、たった今自分は多角的な視点を持たなければと思っていたけど、それもまだ不十分だったと、自分の未熟さを突きつけられたようでした。
物語の視点がスムーズに他者へと引き継がれていき、それと同時に時系列も行ったり来たりしますが、多少混乱はするものの物語はわかりやすく進行し、伏線が回収されていきます。
脚本が本当に素晴らしく、謎が次々とつながっていく気持ち良さ。気付けばどっぷりとこの映画の中に入り込んでいました。カンヌの脚本賞受賞も納得です。
ところで、タイトルの「怪物」ですが、この映画でいう怪物とはいったい誰のことを指しているのでしょうか。
「怪物」と言うフレーズは、湊と依里(湊の友人)の「怪物だーれだ」という遊びの中で出てきます。それは、ヒントを基に自分の引いたカードの絵を当てるというゲームです。
そこから考えると、少ない手掛かりから勝手な推測をして物事を決めつける人のこと、つまり多角的な視点を持ち合わせない人を怪物と呼んでいるのかなあ?あ、それって私のことじゃないの?面白いストーリーと並行して、映画に隠されたメッセージがぐさりと刺さってきます。
以下ラストに関するネタバレり
ラストだけなんだかふわっとしてるなと思ったんですが、鑑賞後に考察サイトなどを読むと、子どもたちは亡くなってしまったと書かれているものもありショックを受けました。いや、亡くなっていないと思う、と書かれているものもあり、どちらにも取れるエンディングでした。
が、私は残念ながら亡くなってしまったと考えた方が物語としてはすんなりつながるように感じました。
大人達の一方的な思いの押し付けが子ども達を追い詰めてしまったのでしょうか。
そう考えると怪物は大人のことを指してるのでしょうか。
亡くなったことで自由になれたような子どもたちの笑顔。忘れられない作品となりました。
最後に残念なお知らせ。すごくいい作品だったのに、レビューがあまり上手く書けませんでした😅