Hana

怪物のHanaのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
3.9
もっとおどろおどろしいミステリー的な作品かと予想していたが、とてもリアルで、だからこそ背筋がヒヤッとするような箇所が多々あった。

いろんな登場人物からの視点でストーリーを体験できるので、つい、視野がせまくなりがちな私には良い感じに考えさせられる作品だった。

湊からすれば、いじめる側の同級生も怪物だけど、母親がもしかしたら一番の怪物。
固定観念から、「将来結婚して、幸せな家庭を築くこと」を湊に押し付け、過剰に心配したり、心に余裕を持って湊の話を聞くことすらできない母親。
でも、一般的な母親はこんな感じであるし、昔の私もこんなだった(いや、これ以上)。
ましてやひとり親で、日々精一杯の生活をしているとこうなってしまうのも、非常に共感できる。

母親をモンスターペアレントとしか認識できないことも空恐ろしいし、何より、そういう空気を押し付け、それ以外の意見すら全く耳を傾けないという教師陣。
会話すらできないという徒労感を安藤サクラは見事に表現していた。
素晴らしい演技だった。

人は一人では生きていけないし、コミュニティや人間同士の交流は大切だと思うけど、固まることで、違う価値観などを認められない(話すら耳に入らない)空気感は、空恐ろしく、これこそが人間のモンスター的な精神なのだろうなと感じた。
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