ベルベー

マイ・エレメントのベルベーのネタバレレビュー・内容・結末

マイ・エレメント(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

観て面白くなかったらどうしようって思って中々観に行けなかったんだけどそれって要は期待してるんだよねディズニーピクサーに。でもその一方的な感情って果たして相手に取って良いんだろうかとか「マイ・エレメント」で描かれる両親の娘への期待がプレッシャーになっていた様を観て思ったりしたけど、ディズニーやピクサーは私の親じゃねえからなどう期待するかは私の勝手だわちゃんと期待に応えてくれちなみに「マイ・エレメント」は傑作でした!観に行って良かった!!

四大元素の擬人化ってどうなんだろうと半信半疑だったんですがそこは流石のピクサー。キャラクターも世界観も101分の上映時間では勿体無い程の作り込みで、視覚的に楽しませてくれる。なるほど食べ物はそうなるのかとか。火だからガラス細工を弄れるのかとか…そしてそれが現実を生きる我々へのメッセージに繋がっていくのだから見事なアイデアの拡張。

ピーター・ソーンは「アーロと少年」以来の監督作だけど、彼もアジア系なんだね。火のエレメント達はアジア系のメタファーで、災害に遭った火の国から移住してきた彼等の暮らし、性質や慣習的に周囲から差別を受け(同時に相手を差別してしまい)対立してしまう様子はフィクションでありながら現実社会を想起させる。「ミナリ」が近いかも。主人公が両親との考え方の違いで葛藤する女性なのは同じピクサーの「私ときどきレッサーパンダ」に通じるか。(最近は数が増えてきたとはいえ)未だそれ程多くない、アジア系にフォーカスした映画だ実は。

そして結構大人な雰囲気のラブストーリーでもある。火のエレメントである主人公・エンバーは水のエレメント・ウェイドと出会い、正反対の性質で頼りない彼に最初はイラつきつつ徐々に惹かれていき、でも種族や育った環境の違いが壁として立ちはだかり…。

肌で触れ合うことが出来るのかどうかにフォーカスするって結構大人なラブストーリーだよね。ラストがしっかりキスなのも。他にも言葉遣いがちょっと色っぽかったり。子供が観ても問題ないレベルだけど。林檎のもぎり合いとか笑。

監督は「アメリ」をオマージュしたらしくて成程なと。それ以上に思ったのはストレートに「ロミオとジュリエット」だなってことで、「マイ・エレメント」は現実社会の写し鏡なのにロミジュリが成立することに、人類の成長しなさを感じた苦笑。シェイクスピアの時代から、対立に振り回される恋人達はいるんだよね。

一方で、じゃあ若者達は親と向き合っているのか?という問題にも言及している。親の期待って忖度じゃない?ちゃんと話したら分かってくれるんじゃない?…本作が導く結論は、勿論綺麗事で、実際には子供がいくら真剣に訴えても聞く耳を持たない親だっているわけだが、でも子供側が勇気を持った方が良いというのはその通りなので。

あと、災害との向き合い方についても考えさせられる作りになっている気がした。それこそ今回、久しぶりに同時上映の短編があって、それは「カールじいさんと空飛ぶ家」の続編なんだけど。喪失とどう向き合うかを説いた「カールじいさん」と本作は共通するものがあるかもしれない。

エンバーの両親がエレメント・シティに来たのは故郷が災害に襲われたから。そして再び彼等を災害が襲う。それは多くのものを奪うけど、でも災害を乗り越えた彼等だからこそ得たものもある。本当に大切なものは何か。エンバーもエンバーの両親も、洪水を経て確信することができたんじゃないだろうか。

その為には、ブルーファイアは消えた方が良かったんじゃないかとも思うけど…本当に大切なものはエンバーとウェイドだから。ウェイドが認められる為にはブルーファイアを守った方が良いは良いんだが。それこそピート・ドクターだったら消していただろうなと思ったり。あと洪水のシーンはアニメとはいえ日本人的には色々思い出してしまうものもあるので、もう少し注意喚起があっても良かったかもしれない。

それにしても主役のエンバーとウェイドはチャーミング。「ズートピア」以来の推しカプです。吹き替えの川口春奈と玉森裕太も良かった。サンドウィッチマンの伊達は上手すぎて気付けない笑。あと大谷育江の無駄遣い。ピクサーの日本語版主題歌は当たり外れあるんだけど、今回は大当たり。越智志帆、(録音とはいえ)声通り過ぎで笑ってしまった。
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