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マイ・エレメントのrage30のネタバレレビュー・内容・結末

マイ・エレメント(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

火の女性と水の男性の恋を描いた作品。

映画の冒頭、『ズートピア』を想起させる、多様性を包摂した街並みにはワクワクさせられましたし、火・水・土・風の元素を擬人化したキャラクターも興味深く見れました。
各元素の特徴を活かした、特技やギャグも面白かったですね。

物語的には、主人公の後継ぎ問題と恋愛が描かれます。
下町の人情話といった内容で、ピクサーにしては保守的なテーマに感じたかな。
勿論、主人公の出自を見れば、これが移民一世の重圧や葛藤を描いている事は分かりますが、個々の話は親離れの話だったり、ロミジュリ的なロマンスだったりと普遍的な話なので、そこまで新鮮さは感じませんでした。

また、キャラクターデザインに関しても、元が元素なだけに、抽象的なデザインで印象に残らないのが辛いところ。
絵画っぽいルックはアーティステックで、チャレンジングな表現だとは思うんですけど、それとキャラクターに愛着を抱けるかどうかは別問題で。
もうちょっとキャラクターに愛着を抱けたら、より感情移入出来たかもしれません。

個人的にすごく惜しく感じたのは、ラストの展開。
主人公と恋人が体を合わせた時に出来る、水蒸気を活かして危機を脱する…みたいな展開を期待していたのに、普通に恋人が蒸発して消えてしまうと。
主人公の愛の告白で恋人が復活するのも良いのですが、2人の愛の力で危機を乗り越える話にした方が、2人の将来を暗示するという意味でも良かったのではないでしょうか。

物語にしろ、キャラクターにしろ、私にはあまり刺さらない作品でしたが、だからといって、駄作というわけでもなく、映画自体のクオリティーが高いのは認める部分。
近年のピクサー作品は「地味だけど良い作品」が続いている印象がありますが、本作もそれに連なる作品と言えるでしょう。
派手なキャラクターに頼らず、物語を第一に考える姿勢は素晴らしいと思いつつも、そろそろ『トイ・ストーリー』や『モンスターズ・インク』に続く、キャッチーな作品も期待したいですね。
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