瀬口航平

ナショナル・シアター・ライブ 2023 「かもめ」の瀬口航平のネタバレレビュー・内容・結末

-

このレビューはネタバレを含みます

うーーーん、、、正直褒められるところが少ない笑

舞台美術が椅子しかなく、照明や音響ほぼなし、衣装も変わらない。これは稽古場での芝居をそのまま見せられた感じだった。
もしそれを狙ってるなら、なぜそうしたのか知りたい。。。
チェーホフは静劇とよく言われるけど、ほんとに静かにやりすぎると死んでしまう、みたいな話は聞いたことあるけど、これはそんな感じだ。死んでしまってる。。

内側の激しい思いと、外側に表出させている態度や行動の矛盾がチェーホフの作品の面白いところで、内側の熱さが見えないと面白くないのよ。。。
アルカージナ役の方は良かった。他の俳優はところどころ良かったけど、全体的な演技のスタイルが静かすぎて。。俳優の力量というより演出の方向性だと思う。
あと、構成もかなり独特。割とかもめは観てるし、やったことも何度もあるはずなのに、そのおれでも、ん??これは何の役だったっけ?って始めのシーンでなってしまった。

始まり方が、コースチャの劇中劇終えた瞬間からだから、それまでの役柄の関係性や状況の説明が全くなくて、今喋ってるこの人はだれ?何者?となってしまって、話がよくわからない。
初見の人にはかなり理解の難しい始まり方だと思う。。。
その後、戯曲の序盤のシーンを少しずつ織り交ぜていくところは、割と面白かった。意外とやれるんやね。
その場に本来いない人物がそこにいて、微妙にリアクションしてるのも面白い。シーンが複合的になっている。
現代の感覚に落とし込んだ脚色も共感しやすくて良いです。
休憩に入る3幕まではなんとか観れたけど、4幕はニーナとコースチャのシーン以外はかなり観てるのきつかった。。。関係性の変化がそこまで現れるわけではなく、その上ずっと陰鬱な感じなので。チェーホフは状況が陰鬱なのであって、そこにいる人物は陰鬱ではないのよ。。。
ある意味、ああこうやるとチェーホフはうまくいかないのか、という手本を見せてもらえて貴重だった。今まで観てきたものはそれなりに面白いやつだったのかもな。

コースチャの一人ゼリフのシーンカットされてるの悲しかった。。聴きたかった。。死ぬ直前の言葉も聴きたかった、、、

映像だからなんとかクローズアップされてて観れたとこあったけど、これ劇場で観たらかなりやばいと思う。。。全然つたわらない。。。
イギリス人よく笑ってくれるから、ああ、ここ笑いどころなのか、というのがわかってそれはとても発見でした。

ただ、アルカージナとコースチャ、ニーナとトリゴーリン、アルカージナとトリゴーリンの二人のシーンは、こういう演出だからこそとても緊密で繊細で、面白く観れた。余計なものがないからこそ細かいとこを観るしかなくて、しかももともとすごく良いシーンだから、普通にやれば良いシーンになるのよね。
それ以外が良くないシーンというわけではないけど、ずっとこの調子で演じられるのはきつかった。だから部分部分では悪くなかったとこもあったけど、起伏がなかったから全体としてはあまり楽しめない演出だったと思う。
あとあと、劇中劇のシーンなかったけど、これないと最後のニーナのセリフとかが全然感動的にならない。。観客の想像に任せてくれたのかもしれないけど、ここは想像させるとこなのかな。。。
そもそもニーナが再びあのときの劇のセリフを話すとこすらカットされてたけども。。

酷評みたいだけどちゃんと褒めるとこは褒めました。

あといつもより上映館数少ない気がするのは気のせい、、?時間帯も仕事後には行けない時間になってて違和感。。
パンフレットもいつもより高かったのも違和感。買ってみたら少しだけいつもより文章多くて、その影響なのかな、とは思った。あと必ずある演出家やキャストの作品に対するインタビューがなくてびっくりした。最小限の情報しか与えず、これでもかというぐらい観客の想像力に委ねていた舞台だったのかもしれない。
瀬口航平

瀬口航平