Asino

アイスマイヤー曹長の選択のAsinoのレビュー・感想・評価

アイスマイヤー曹長の選択(2022年製作の映画)
3.5
鬼教官として有名なアイスマイヤー曹長は、妻子もある身だけれども実はクローゼットゲイで、新兵の一人と恋に落ちる。でも軍の組織のなかでどう振る舞えばいいのか葛藤するという話。

周囲の戸惑いとか揶揄とかはもちろんあるのだけれど、現代(10年くらい前の実話)の話で悲劇にはならず、病気の克服とかずっと前向きな話でほっとした。
上官のほうが躊躇が重くて若者のほうがわりとあっさりしてる(最初からカムアウトしてる)というのが世代差なのだと思う。
実話だそうなので(ヴェネツィア映画祭のレッドカーペットにご本人たちが軍服で登場したりもしてたみたい)、わりとあっさりさくさく話が進み、あちこち唐突感があるのと、家族の話とか飛ばされてる感があったのが少し残念。ちょっと軍の広報ぽさを感じてしまって。

追記
映画として良くできてるとはあんまり思わないんだけど、なんかずっと考えてしまう。
本人に取材した実話ベースとのことなので、いわゆる鬼教官な主人公が新兵に恨まれるのはもちろんだけど、上官の評価が低く現場から外されたりするのがリアルでちょっと面白かった。
あのしごきは結局自分のセクシャリティに関する煩悶が原因だったのだとすると、八つ当たりでしごかれた兵士たちにはいい迷惑だし、突然放り出された奥さんと息子が気の毒だと思ってしまうとこもあったけど。
あと初めてベッドを共にするところは、「え、それは合意取れてないのでは上官なのに?!」とすごい心配→未遂でほっとする、という流れになったんだけど、その辺はさすがにちょっと脚色という配慮?があったのかもと邪推した。脚本が唐突なのか描写が足りてないのか判断に迷うところが結構あった。

EUフィルムデーズ映画祭上映作品で、レインボーリールではないので、男性同士のベッドシーンもある内容に驚いた方もいるんじゃないかとは思うけど(会場の中年男性率の高さよ)、フィルマークスの感想に「気持ち悪い」とか書いてる人を見かけてゲンナリしてしまった。
そういう現実のなかで意思を貫いたふたりはすごい。
Asino

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