千年女優

みなに幸あれの千年女優のレビュー・感想・評価

みなに幸あれ(2023年製作の映画)
3.0
看護師を目指して上京した専門学生で、卒業も近いある日に田舎町に暮らす祖父母の家を訪れることになった娘。久々の再会を楽しむもかつて少女の頃から不審に感じていた家に住む家族でない「何者」かの存在に怯える彼女が、やがて打ち明けられたその正体と町に古くから伝わる一つのしきたりに翻弄されていく様を描いたホラー映画です。

KADOKAWAが主宰する公募型のフィルムコンペティション「日本ホラー映画大賞」の第一回大賞受賞作となった短編映画を制作者の下津優太自身の監督で長編化した作品で、世界にある幸せの総量は変わらず誰かが幸せなら誰かは不幸になる質量保存の法則を寓話化した物語をJホラーを牽引し続けてきた清水崇の総合プロデュースで描きます。

『ミッドサマー』の影響を感じさせる田舎ホラーで、このジャンルでは定番の「老夫婦」が物語に映えます。それでも主題となる中二病的なトンデモ理論への信頼がかなり過剰で、それを拠り所にするあまり「設定」を超えて物語や恐怖に落とし込むまで至っていませんが、古川琴音が持つ正負のどちらにも振れる危うさで成立させる一作です。
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