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みなに幸あれのmashiraのレビュー・感想・評価

みなに幸あれ(2023年製作の映画)
3.2
テアトル新宿にて、舞台挨拶付の上映を鑑賞。結論としては、好みではなかった。

「世界の幸せの総量は決まっている(=だから誰かを不幸にすることで自分が幸せになる)」という『法則』について繰り返しセリフで直裁に語られるため、観客はこの作品で起こっていることをどうしてもロジカルに読み解こうとする。

『法則』が正しいとする限り、ジジババの行いは合理的であるという話なので、じゃあ序盤のジジババの一見理解に苦しむ奇行や奇言の真意も、明かされた『法則』に照らせば鮮やかに理解できる仕組みになっているのかと言えば別にそうでもなく、結局は単発の「不穏なシーン」以上の意味は無かった、みたいなガッカリが非常に多かった。

脚本家の高橋洋あたりがクリエイター向けの講義で、「まずはやりたいシーン、面白いと思うシーンを全部ぶち込め。繋がりは後からだ」みたいな事をよく言っており、それは特にホラーに関しては一面で真理かも知れない。

だが本作の様に『法則』が核にある物語においてそれやっちゃうと、理に落ちないことへのフラストレーションがすごく溜まりやすい。だから、9割以上の人にとってロジカルな解釈が困難であろうババの○○シーンなんかは、自分は無いほうがよかったと思う。

あと監督、「この作品を観て『怖い』と思う人と『笑ってしまう人』と両方いてくれていい」みたいなこと言ってたけど、ホラー映画大賞の看板背負ってんだから、そういうのは全観客を一回でも紛う方なき恐怖のドン底に叩き落としてから言ってくれよ、もう…!!

主演の古川琴音は素晴らしい演技を見せてくれた。皆が誉めてるババ、そこまで良かったかな。自分は山の叔母さんの方が好み。
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