このレビューはネタバレを含みます
顔 顔 顔
みんないい顔してる。
主人公のダメ刑事、工藤を演じる岡田准一はもちろん、工藤の上司役の杉本哲太も同僚の駿河太郎も、工藤の妻役の広末涼子でさえ、いい顔。
中盤以降は県警の監察官、矢崎を演じる綾野剛とヤクザの親分役の柄本明のいい顔が炸裂。
前半は工藤の右往左往が結構笑えるんだけど、矢崎がキレてからは空気が一変。暴力がどんどんエスカレートする。
矢崎もどんどんいい顔になっていく。
周知の通り、この映画は韓国映画のリメイク。韓国映画に限ったことではないけど、こういう悪徳刑事モノは、「人間って結局は卑小な存在」っていう諦念がベースにあるような気がする(『アシュラ』とか)。で、抑圧によるフラストレーションは、暴力という形でしか振り払えないという構図。
この映画も、矢崎が本性を現すまでは、同じ路線かと思ったんだけど、矢崎の暴力性が高まるにつれて、どうも違う感触が生まれてくる。
そして、最後の工藤と矢崎の顔。
金も地位も名誉も家族も失ったとしても、ギリギリまで生きることにしがみついて、もうなんだかわかんないけど「あいつぶっ殺す」その想いだけで、顔をブチ腫らして目もつぶれそうなのに、クルマを駆って工藤を追いかけ、捉えたときの矢崎の笑顔。
妻と娘の声を聞いて、なんか許されたかな あそこもここも痛いし、もう、死んじゃってもいいかな なんて甘えたこと考えてたとこに、矢崎の笑顔を見て、なんか、生きる気力が湧いちゃった工藤。
「人間は所詮こんなもの」なんてスカしててはいけない。わけわかんないけど、みんな生きていく。生きる理由なんていらない。
最後まで行こう。