大島育宙

最後まで行くの大島育宙のレビュー・感想・評価

最後まで行く(2023年製作の映画)
4.5
ああ最高に面白かった。韓国オリジナル版未見。
毎シーン毎シーンがルールのわかる・ヤバさもわかる限定状況サスペンスで、それらが数珠繋ぎになって大きなストーリーになってるのに羅列感は全くない。良い意味で新しさを感じない、いつの時代に公開されても好評なのでは?というオールドスクール感、盤石な安定感。

邦画で言えば『網走番外地』、洋画で言えばヒッチコック『北北西に進路を取れ』みたいな鉄板オモシロアクションサスペンス。

自業自得の連鎖だけど、バカで憎めないW主人公を蔑みながらも応援してしまう。後半に「ああ面白かった。こんな感じね〜」とひと息吐こうとしたところで上回る過剰展開が段積みになる快感。

映画雑誌のインタビューで、美術へのこだわりが昨今の日本映画のそれではないという話を読んだ。札束の山、普通ならコスト削減のために一番上だけ印刷してあとは白紙のところ、今作では全部刷られてるから、現場のアクションで「札束崩してみない?」というアイデアが出ると言う。なるほど、アクションの一挙手一投足が様式的ではなく、その場凌ぎなのだ。泥臭い暴力はその場凌ぎのはずだ。バカ2人が大きな犠牲と共にその場凌ぎで悪戦苦闘する物語は最大限に知恵を絞ったその場凌ぎで足し算足し算で作られていて欲しい。そんな裏話が信用できる出来上がりだった。

廃工場だけややテンプレ的だったけど、
遺体安置所や寺や墓場で暴れる気持ちよさが勝った。墓石の角で全身打撲するだけで常人なら失神するだろうが、体内にアドレナリンも足し算された2人は狂い飛ぶ。