ふじこ

スーツケースのふじこのネタバレレビュー・内容・結末

スーツケース(2017年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

2001年9月11日、空港で働く若い男は乗り換えに遅れた客の荷物を別の飛行機への積み込みを頼まれる。
他の皆がやっているように勝手にスーツケースを開けて物色し、お金と機長がつけるバッヂを盗む。
その他はアラビア語で書かれた書類やビデオやナイフ、機長の制服や操縦マニュアルが入っている。
不思議に思いながらも遅れて飛行機に積み、仲間とダラダラしているとみんながテレビを観ているのに気付いて集まってみると、既にタワーに突っ込んだ2機の飛行機のニュースがやっている。
一転して忙しくなる空港。報道と共に空港は閉鎖され、沢山の警察やFBIで溢れかえる。

主人公は先程盗み見たあのスーツケースを乗せるはずだった飛行機もハイジャックされている事から、あれこそ犯人のものであると上司に進言するものの、客のスーツケースを開けたんならお前はクビだ、中身をどうやって知った?との問いに答えられない主人公に、もうたくさんだ と言い残して去ってしまう。

スーツケースの事が頭から離れなくなってしまった主人公は、滑走路は厳重封鎖、職員ですら外に出る許可を貰わないといけない中こっそりと外へ出て、スーツケースを探す。
滑走路用のローダーに乗って走り出そうとしたところで武装した警察と別の上司に止められ、あのスーツケースは今回のテロに関係しているんだ!と主張するものの信じて貰えず、上司が取成して逮捕は免れ、戻るように言われる。
しかし強行突入して見つけたスーツケースを引っ張り出したところで警察に捕まり、そのスーツケースを開けてくれ!ハイジャック犯のバッグなんだ!と叫ぶものの手錠をかけられて連行される。
そのスーツケースを飛行機に戻せ と指示しているのを聞いて、車に乗せられながら爆弾だ!バッグの中に爆弾があるんだ!と叫びながら連れて行かれる。

それから空港内で拘束されたまま、例のスーツケースが開けられ中からアラビア語の書類を取り出して通訳が読み上げる中、男達に取り囲まれて尋問を受ける主人公。
それからどれだけ時間が経ったのか、手錠が外され、最初に進言した上司がやってきて お前は空港出禁だな もう要らないだろ と主人公が手を伸ばした反射ベストを取る手を止める。
そしてあのバッグから盗んだ機長のバッヂだけを渡され、空港を出る事に。

それから月日が経ち、壁にあのバッヂを貼ったまま自動車整備の仕事をしている主人公。
そこにラジオが流れてきて、あのテロ事件の新たな真実が明らかになりました と聞こえる。
当日FBIがローガン国際空港で入手した情報によって19人のハイジャッカーの身元を速やかに特定し計画を把握することで、人命を救うことができたそうです と。
手を止めて聞き入っていた主人公が、壁に貼られた機長バッヂを見て少しだけ誇らしそうな顔をして仕事場を出ていく。

2001年9月11日 ローガン国際空港でモハメド・アタのスーツケースが遅延し
その中に犯人を特定し 逮捕に至る重要な手がかりが見付かった
それを発見した荷物係は航空会社を解雇された

と表示されて終わり。


こんな話があったとは…。
2001年、もう23年も前なのかぁ、この時の荷物係の人は今どうしているんだろう。
結果的に人命を救ったのは間違いないし、彼が自己保身に走ってスーツケースの中身を見たことを誰にも言わなければもっと多くのテロが発生したかも知れず、その功績だけは間違いないのだけれども。
日常的に客のスーツケースを漁って金目のものを盗み、ネットで売って稼いでいる荷物係の特集も見たことがあるくらい問題になっていて、その点で彼が解雇されたのも仕方がないんだよな…。
だから、あの日盗んだ憧れていた機長という職のバッヂに、聴こえてきた救われた人命もいたのだという報せに少し誇らしく思って笑うあの感じがなんとも言えない味がある。
間違っていたけれど、最大の間違いにはしなかった。
客のバッグを開けて…なんて考えたこともないけれど、もし万が一自分だったら…って考えると、まぁ…言うよね。言わずにいる事に耐えられない気がする。
転んで…!急いで持っていこうとして!転んだら開いちゃって…!!みたいな見苦しさはあるかも知れんけど。
ふじこ

ふじこ