さゆ

きみの色のさゆのレビュー・感想・評価

きみの色(2024年製作の映画)
4.2
「色」を生活の中で細かく意識するほうではないけれど、それでも無意識に色がどれだけ影響を与えているのだろうと考えることがある。
そういえば私の女友達にも色が見える子が居たな。彼女の見る世界もこんなふうに綺麗で少し寂しげなんだろうか。

無意識。あるいは言葉にならないもの。
そういうものに2024年のアニメーション技術の全てを使って向き合った意欲的な作品。

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私は基本的に二次元のキャラは超絶作り物として見てしまう。そのベクトルが強い方だと思う。
なのに映画の上映中、3人の若人の実在を信じた上で心から応援していた。
「単純化は芸術の目的ではない。しかし物のリアルな側面に接近していくと知らず知らずのうちに単純さに到達するのである。」
最近川村美術館に行った時にメモしたコンスタンティン・ブランクーシの言葉だけど、まさにきみの色で目撃したのはこういうものだった。
アニメってもっとリアルを超えたリアルを表現できるのかもしれない。

キャラクターの輪郭線が細い&薄いおかげもあるかもしれない。
より色を意識させられたし、キャラクターとしての記号化から解放されている感じがあった。

○色彩→色が題材になっているだけあり、色を丁寧に取り扱っているなと思った。

現実を見ている時⇄夢描いている時。周囲に気を配っている時⇄自分の中の考え事に耽っている時。
映画でもアニメでも「ピントのボケ」などでこの両者の差が表現されることは多いけど、今作では画面内の色使いでそれをやっていた。
おまけにそれで物語に緩急が付いていて、凄かった。
色収差使いまくり、影にグラデーションついてるのも、かっこいい。

○コンテ→煽り構図と俯瞰構図が多い。
キャラクターの眼差しが意識されている印象

○作画→サイエンスSARU×京都アニメーションの良いとこ取り
アップ〜バストショットにあまり可愛らしさを感じない。どこか視覚的満足感がなかった。好みの問題かも。
ロングショットだとリアリティがあってゾクゾクした。バレエのシーンとかエグい。

○ストーリー
少女漫画で何度か見たような展開で新しさはないものの、その分五感を使って主人公たちの世界と近づくことができた気がする。

○音楽
めちゃ良い。
テルミンの音が作る空気感が好きだった。
これはストーリーへの突っ込みになるがライブパートはちょっとルイが仕事しすぎ。

何度でも言うが、色彩構成が素晴らしくて。
今年ナンバーワンのアニメ作画だったのでは。

観終わってかなり時間が経ったからいつもに増してふわふわした感想になってしまったが、超良作だった。

余談:アニメで煽ったり俯瞰したりしまくるとあまりキャラに萌えなくない?これ何でだろう?
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