渡辺文樹監督がゲリラ的に貼ったポスターが良くも悪くも語り継がれていて、少し前もポスターを貼る監督の姿がニュースになっていた。本作は知的障害のある少年が学校内の窃盗事件の犯人と疑われて自殺した、実際の事件がモデルになっている。しかも、その少年の墓を監督が掘り起こそうとしているなど、現代の炎上事件とも似た話題性が先行する。
1976年の福島の田舎町が舞台になっていて、当時の村社会の暗部が描かれる。方言だからか、意味は聞き取れるが、日本語字幕も重ねられているのが印象的だ。学校では職員室から預金通帳が消える事件が発生し、知的障害故か、アリバイなどがうまく証明できなかった主人公の少年が疑われてしまう。
村の大人同士の話し合いでうまく収めるのだが、教師から再び容疑をかけられる。この教師を監督自身が演じていて、炎上事件と絡めた狂気的なのめり込み具合が感じられて怖い。その後、少年は祖父との口論の末亡くなってしまうのだが、実際の事件とは異なる解釈で、かなり問題になりそうな(実際問題になった)変更をしている。
本作を通して、村のドロドロとした人間関係、家族、親戚や性などいろんな問題を内々で解決するが、割り切れない何かが煮詰まって滲み出ている感じがして強すぎた。最後のシーンで、雪が積もる中、教師の男が村を離れるが、空が真っ赤な夕暮れになっていて、黒沢清映画のような異世界につながっているような奇妙な感覚になった。