あまのうずめ

せかいのおきくのあまのうずめのレビュー・感想・評価

せかいのおきく(2023年製作の映画)
3.7
安政5年江戸晩夏。寺の厠の軒先で雨宿りをする紙屑売りの中次と汚穢屋の矢亮。そこに寺の手習い所で読み書きを教えるおきくも入って来る。おきくの父松村源兵衛は勘定方だったが今は貧乏長屋住まいだった。武蔵国葛西領亀有村、相方が休み一人で糞尿を運ぶ矢亮を中次は手伝うことにした。


▶︎阪本順治監督が30本目にして初めて脚本も担当したオリジナルの時代劇で、黒木華主演、寛一郎、池松壮亮共演。寛一郎と父・佐藤浩市との初共演シーンもある。2023年キネマ旬報ベストテンで第1位に選出されたモノクロ作品でスタンダード・サイズで撮られている。

序章、第1〜7章、終章からなり、年号・場所・四季が細かく設定されていてチャプター終わりにはカラーとなる。この淡い色合いが見事だった。うんこが影の主役でモノクロで良かったと二重の意味で思った。

源兵衛が「せかいを知っているか?」と聞く台詞があるのだが、世界は何も“世界地図”だけで表される世界だけではないことを改めて知らされガツンとやられてしまった。

やれSDG'sだのと狂乱する現在、日本には古来より循環型社会があったことを提示していて、川に流したり二階から投げていた某国らにみせてやりたい気分になる。

おきくの恋物語や中次と矢亮の青春物語に、討幕間近の江戸で職を追われた後斬られることとなった武士や汚穢屋等の階級をも、“クソミソ”に交えコメディタッチに描いた瑞々しい作品。