あまのうずめ

聖地には蜘蛛が巣を張るのあまのうずめのレビュー・感想・評価

聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)
2.8
イランの聖地でもあるマシュハドではスパイダー・キラーと呼ばれる連続殺人鬼の噂で持ちきりで恐れられている。街にマシュハド出身のジャーナリストのアレズー・ラヒミが事件取材の為やって来る。アズレーは地元新聞社のシャリフィに話を聞きに行くと、犯人から“腐敗に対する聖戦だ”との電話が何度も入っているという。犯人は記事にして欲しがっていたが、シャリフィは宗教的な話は避けろと上から言われていた。


▶︎第75回カンヌ国際映画祭でアズレー役のザーラ・アミール・エブラヒミが女優賞を受賞。イランが舞台だが、デンマーク・ドイツ・スウェーデン・フランスの合作。

テレビニュースで9.11のニュースが流れるのを聞きながら生活のため売春をする女が仕事に出るシーンから始まり、予約をしたホテルで独身女が一人でとの理由でアズレーが拒否られるシーンに繋がるのも象徴的だ。

犯人ザイードが早い時間に判明し、その後の犯行場面とアズレーの取材の前半から、後半はザイードが連行されてからの裁判と周囲の人たちを映す。

街は殺人とイスラム法を実行していると言う人に二分されていて、そこに西側の価値観を持つジャーナリストが入ることで、イスラム圏での現実をくっきりとみせている。

イラン国内ではアスガー・ファルハディ監督が秀作を作り続けていて、そこでイランの法体系も知ったが、たとえ殺人でも鞭打ちや賠償金、署名で放免になる制度を持つ国だ、娼婦に“制裁”を加えただけで殺人ではないと主張したザイードがイランで英雄視されるのも通常だろう。

2000〜2001年にマシュハドであった実話に着想を得たとあるが、同じような内容のものは既に作品化されているし、法治国家側が製作した作品としては浅薄で、ラストに重きを置きたかったのだろうけど中途半端。

冒頭のマシュハドが蜘蛛の巣状にライトアップされて映されたことも邦題に繋がったかと推測した。引用された“人は避けたいことと出遭うものだ”とのクレジットは意味深だった。

WOWOWの『カンヌ国際映画祭特集』にて鑑賞。