あまのうずめ

TATTOO「刺青」ありのあまのうずめのレビュー・感想・評価

TATTOO「刺青」あり(1982年製作の映画)
3.2
大阪・警察病院に死体が運ばれる。体には帽子が置かれている。広島では駐在警官が実家の母に息子が大阪でとんでもないことをやらかしたと駆け込んで行く。昭和54年1月、竹田明夫、30才没。検死する監察医が血を拭き取り「タトゥー」と言う。昭和38年広島で15才の明夫は強盗殺人を起こした。


▶︎ATG=アート・シアター・ギルド製作。昔の日本にA24のように低予算で監督の作りたいように作る組織があり、今作も高橋伴明監督がATG製作で、昭和54年に起こった凄惨で猟奇的で犯人が射殺された『梅川事件』を題材に撮った作品。

事件の詳細について描いていなかったことにまず安堵した。時折日時をクレジットしながら竹田明夫の15才からの半生を西岡琢也脚本で描き、後に高橋伴明と結婚した関根恵子がミチヨ役で出演している。二人で逃避行したのも納得なほどキレイに
撮っていた。

不遇な家庭で母に強く影響され女に執着し、強く見せるための刺青。粋がる明夫に演技下手だが宇崎竜童がピタッとハマっている。

事件の背景に迫るのではなく明夫の“30才”にスポットを当てたのは、事件後僅か3年だというのもあったかと思うが、そもそも凶悪事件の犯人に実名を与え個人を具にしようとする日本のメディアがおかしい。欧米だと“犯人”以上だ。その点でも好感を持った。

脚本はともかく、過去をグリーンに着色し、銀行に入るシーンをストップモーションでモノクロにした演出は印象的で、植木等、原田芳雄の友情出演、チョイ役で泉谷しげる、大杉漣の出演。監督助手で周防正行の名もあり、ピンク映画出身の高橋伴明他の出世作となった作品。

WOWOWの『ATG特集』にて鑑賞。