このレビューはネタバレを含みます
最初にコカイン・ベアの餌食になるカップルの名前がエルサとオラフ(クリストファーとも呼ばれていたが)。明らかなアナ雪への言及である。また、序盤に字幕で表れるクマの生態もWikipediaを参照するという適当ぶり。「この映画はその程度の軽さで撮られていますから観る方も肩の力を抜いてくださいね」というメッセージを読み取った。
1985年代を舞台としており、子どもは犠牲にならないというラインを守っているあたりが良心的である(あの女の子がなぜ殺されなかったかというと、コカイン・ベアは子グマ二頭の母親であり、女の子も守られるべき子どもと認識したから、というかなり適当な理由付けがなされている)。
そういった心理的セキュリティを観る側に与える割には、大人の殺戮シーンは非常にバラエティに富んでいる(クマだけではなく森林レンジャーに誤って殺されるティーンもいる)。かなりはっきりと切断されたリアルな手足を見せている。
最後に「レイ・リオッタに捧ぐ」と献辞が出ていた。手足を切断され、頭を抉られた人間はいても、この映画で生きながら内臓をクマに引き千切られる姿を見せたのはリオッタだけである。リオッタもまた、クマとの闘いを演じきっている。遺作に相応しいのではないだろうか。