テッサロニキ映画祭にて。

自殺未遂をした弟を心配する兄と母、ずっと三人の様子を追うドラマ。
弟ダミレの悲しみや苦悩は何なのかははっきり語られず、演じるゴラン・マルコビッチの囁くような台詞と表情で想像するしかない。

心当たりがない兄と母もおそらく同じ。

警察や病院の機械的で事務的な対応に、焦りとこみ上げる感情をなんとか抑えながら話す母兄をよそに、ダミレは静かに遠くを眺めてる。

大丈夫だろうと思って気が緩んだわけではないと思うが、落ち着きそうになると何かが起こる。
母兄同様、見ているほうも心配で仕方がない。

無駄を削ぎ落とした作りだったが、たまーに不思議な描写がチラリ。
ポケットから出したたばこに火が付いている、タバコが消える、喋っていたダミレが次の瞬間寝ている、消えている等。あれはなんだったのか。

そして、ダミレは何を思っていたのか。ラストシーンに映る映像を見て思う。

• #日本未上陸映画ベスト◯◯_みむさん

【鑑賞メモ】
薄暗い室内。
カーテン越しの淡い光。
向き合う兄弟。
青々と茂る木々。
緑を映す車窓。

淡々とした静かな映像の中で、囁くような会話がぽろり、ぽろりと続き、多くは語られない。観ているこちらは、映像の中でうろたえる兄と母に、だんだんと感情が重なってくる。感情移入というよりは、同じ視座に立つような、絶妙な感覚。

兄の眼差しの奥に見える愛。心が疼く。

慟哭からのラストは悪くないけど。
基本フィックス長回しやから虚無映画なのにどこか他人事というか、入っていけない