干し

君たちはどう生きるかの干しのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

アニメーションのスタートレードシステムというか、やっぱり過去のジブリ作品を思い出す場面が沢山あってここがジブリパークだった。
心が挫けた時、空想の世界にひたっていいけど、元気をとりもどしたら現実の世界を少しでもよくするために力を尽くしなさい、というメッセージを感じた。
 
今回一人でレイトショー見に行って、ラストのセリフで冷水浴びた気になったので、次は友だちと見に行こうと思う。

以下、時系列順に思ったことをつらつらと書いた。

*空襲のサイレン
高畑監督の「火垂るの墓」を思いだす。主観的な情景の描き方。走る場面はPOV手法、必死に走ったにも関わらず間に合わなかったことを強調?次の場面への転換があっけない。

*ナツコと人力車に乗る眞人
ヒロインがまさかの継母なのかと思い戦慄してしまった。継母との軋轢が眞人の課題。
母が亡くならなければ、ナツコが継母となることはなかった。
今の眞人にはナツコを母と呼ぶこと、兄弟が生まれることを喜ぶことができない

*疎開先の屋敷に到着
アオサギ登場。ナツコが指差した父親の働く工場は映されず、眞人の心がアオサギに囚われたことを強調?
個性豊かなバアさんたち登場。これだよこれ。引っ越し先って異世界に感じることある。
自室に入ってようやく脱力する眞人、まだ誰にも心を許せていない。
火の海の中の母を助けることができない悪夢。眞人は自分自身を責めている。
アオサギを目で追い、離れの塔?を発見。
駿、狭いところに子どもをねじこむの好きだね。子どもだからこそたどり着ける世界を物理的にも示しているのだと思う。

*転校初日
父母が過保護な都会の金持ち少年、そりゃ田舎でいじめられる。眞人はいじめに遭ったことを隠そうとして、石で自分の頭を殴る。自ら耳を切り落としたゴッホを彷彿。寝込む眞人にアオサギが訪れて母に囚われる心情を煽る。

*木刀でアオサギと対決
アオサギに母との再会を誘惑され、揺らぐ眞人。欲望を叶える代わりに心臓を差し出せと要求、アオサギが悪魔のように表される。ナツコの放った矢でアオサギは退けられ、水に沈み込むように眞人は意識を失う。水が引き、自室のベットで眞人が目を覚ます。

*お見舞い
屋敷に父親の工場で作った?戦闘機のハッチカバーがたくさん運び込まれる。父子は「美しい」と共感し合う。風立ちぬとナウシカ冒頭を思いだした。ナツコを見舞う眞人。部屋に弓を見つける。眞人の傷を撫でて、「姉さんに申し訳ない」と嘆くナツコ。眞人は他人行儀に見舞いの言葉を述べて退出する。眞人はナツコに「失望された」と思い、傷の心配ではなく姉への謝罪を口にしたナツコに失望したのだと思う。アオサギを追い詰めて母に会いたいという思いがさらに強くなる。

*弓矢づくり
煙草の賄賂を思いつく眞人、強かだ。肥後守を研ぐシーンは後の場面で繰り返される。アオサギの風切り羽根をつけた矢が制御できない感じ、もののけ姫のアシタカの腕っぽい。

*「君たちはどう生きるか」の発見
作業の途中で偶然見つけた母からのメッセージの残された本を読み、眞人は心を回復させて行く。見つけた本は装丁からして、昭和十二年新潮社発行版「君たちはどう生きるか」だと思われる。母の言葉の隣のページにあったミレーの「種をまく人」の絵が、原書に挿し絵としてあるのかは分からない。この本のおかげで、母の残した思いの種を眞人が受け取って成長していく。(「種をまく人」は「シュナの旅」の暗喩かもしれない)

*ナツコを追いかけて離れの屋敷へ。一番当たりの強いキツメのばあさんがついてくる
*偽の母親が崩れても、動揺しない。成長している
*アオサギと弓矢で対決 
*ナツコを追いかけて「下」へ
*飛べない鳥たちに押されて墓の門を開ける眞人 千と千尋~マンガ版ナウシカっぽい~
*水平線に並ぶたくさんの船 紅の豚っぽい~
*船乗りのお姉さん登場。振り返ってはいけない「見るなのタブー」古事記のイザナギイザナミ。狩り、死肉を解体する「ケガレ」を担う仕事を眞人も手伝う。死者の国の暗喩?大きな船は「動く城」とも言える。わらわらたち、コダマみたいだし、ポニョの兄弟たちみたいだ。「キリコ」といえばシュールレアリスム。イメージボードとか世界観設計に、シュールレアリスム絵画がかなり影響与えてると思う。ペリカンを埋めて弔う眞人。アオサギと再会。
村上隆がTwitterでベックリン「死の島」の引用を指摘していて、腑に落ちた。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%BB%E3%81%AE%E5%B3%B6_(%E3%83%99%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%B3)

*肥後守で木をけずってアオサギのくちばしを治す眞人。
*人間を美味しくいただくインコたち
宮沢賢治「注文の多い料理店」のパロディ的。本当のヒロイン「ヒミ」?登場。宮沢賢治に関連して、「耳をすませば」で引用された井上直久のイバラード的な情景もちらほら出てくる。
*時の回廊
 インコに追い詰められる。ナツコを見捨てて、現実世界に戻れるけれども、そうはしなかった眞人。偉い。
*ナツコのいる産屋へ
https://kaiganji.jp/guide/born/maternityroom/
古事記の引用再び?眞人を拒絶するナツコ。シキガミたくさん、千と千尋っぽい~。ヤマアラシのジレンマを視覚的に表現していると思った。二人は近づこうとすれば傷つく、それでも家族になろうともがいている。
*ヒミと眞人気絶、眞人は夢の中で大叔父と出会う
無機質でフラットな空間とか隕石が出てくると急にSF感が増す。大叔父は「クリエイター」の暗喩だと思う。自分が美しいと思う世界の断片を構成し編集する。大叔父は世界の構築作業を子孫の眞人に継がせようとするけど、眞人はそれを拒絶する。どっかにそんなアニメーター親子がいたような・・・。
*インコ大王というパワーワード
*大叔父の元へ向かうヒミと眞人
背景に蒲(ガマ)。水上の飛び石を跳ねて渡る二人。古事記、因幡の白兎と大国主神のエピソードからの引喩。
*眞人の選択 自分の意志で思い通りに作り上げることのできる世界より、争いを生む人間の弱さと向き合って、人々とつながりながら現実の世界で生きていくことを選んだ。ヴァーチャルに逃避することへの批判?エヴァと似てる。


ナツコを助けたことで、眞人は家族の中での自分の居場所を確保できたのだと思う。子どもは親に守られるだけでいるより、自分だって家族を支える側になりたいと思っているのだ。

血が繋がっていなくても、母と子の関係になれるということをナウシカとオーマの関係で描いていた。

ばあさんたちと食べる飯のまずさと、下の世界の食事(キリコと食べたシチューやヒミと食べたジャムトースト)の対比。誰と食べるかで飯の旨さ、変わるよなぁ。

ひとまずパンフレットとインコグッズとばあさんたちのグッズを買わせてくれ。
干し

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