馬刺し

君たちはどう生きるかの馬刺しのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
3.7
この作品は観る人によって解釈が全然違ってくる映画だと思う。
「2001年宇宙の旅」を想起させるような抽象的作品。

丁寧なタッチで書かれた作画。現実よりもリアルな音。とても作り込まれている。

人混みの中を走る眞人。そして火のところ。作画めっちゃ好き。

今回、事前情報が全くないという中での公開。そのことだけで様々な考察が飛び交うジブリブランド。さすがです。

ここからはネタバレ注意。(僕なりの解釈)








1人の少年が母の死を受け入れ、現実を受け入れ成長していく物語といえば簡単な話だけど、そう簡単に一括りにはできないどこか重苦しさがある。
舞台が戦時中であること、異世界に「死」を想起させるものが多いこと。そして輪廻転生。
御年82歳を迎える駿監督なりの死生観なのかもしれない。彼の生まれてから今に至るまでのあらゆるものを集めた自叙伝なのかもしれない。

ラストシーン。眞人が母親(過去の姿)に火災で死んでしまうこと(おそらく空襲)を告げるシーンで「なんで?火は素敵じゃない?」と言ったシーンとても好き。(うろ覚え)
純粋で穏やかな石のような暮らしよりも悪意と嘘、争いがある荒波のような世界をそれでも僕は肯定したい。監督がそういう意思表示をしているような気がした。

この世界は非道で残酷である。しかしながらそれさえも肯定し、前に進もうとする姿勢はとても美しい。そんな世界の中で君たちはどう生きるのか問われている気がする。


死はもたらされ、そして新しい命が生まれる。
その繰り返し。
馬刺し

馬刺し