Yuto

君たちはどう生きるかのYutoのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

きっとこれが宮崎駿監督の遺作になるのだろうと強く感じるそんな映画だった。
大伯父の言葉が、青鷺の去り方が、この映画で描いていたことが彼の遺言のような気がして。

生きること・死ぬことは表裏一体ではなく、もっともっと密接で複雑で刹那的で絡み合っている。
いろんな人や価値観と日々出逢いながら、死をも内包しているまだ上手く言語化されていない「生きること」を私たちは苦労しながらしている。
死を、生を、終始実感するこの映画は、生きていることへの讃歌であるとともに、ただ生きていても仕方ないと嘆いているようでもあった気がする。

あの世界は死後の世界や、一般論としての生死の境ではないと思う。死が陰っている人が訪れることのできるプラットフォームのようなもの。
時間や空間という概念を超越したあの場所は、自分の精神の安寧を保つもの。平和で穏やかな世界を作るというのは、本当に世界を背負って実現するのではなく、一人一人の世界を平和で穏やかにしてほしいという監督の願いでもあるのかもしれない。だからあそこは死も生も交わる自分自身の精神世界のようなものなのかなと思ったり。

誰にだって積み木はあるもの。
自分の積み木の組み立て方を学べばいい。学ぶことは生きることだと、悪意に染まらず学ぶべきだと、伝えてくれたこの映画を見て、暖かい気持ちになった。

生きたいな、と生きれてるかな?と顧みた。
こんなに色鮮やかに、難解に、かつポップに映画を表現する素晴らしさに圧倒され感服した。
本当に見てよかった。

この映画を完結させるのはきっと私たち自身。
Yuto

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