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君たちはどう生きるかのTJのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

宮﨑駿、ジブリについてのこれまでの歩みを知ってるか、一般的な長編映画のようなストーリーを期待せず、場面場面の演出やメッセージを読み解こうと能動的に楽しめるかどうかで評価が大きく異なると思います。

前情報が全くない映画鑑賞はどこに連れて行かれるかわからない貴重な体験でした。
見てから2週間ほど経っていてうろ覚えな部分もありますが以下ネタバレの感想です。


まずはアニメーションに関して
一度アニメーターを全員解雇してから本作だったので、見る前は作画に不安がありました。しかし冒頭の靴を脱ぐシーンだけでも細かなアニメ的な演技、表現が確信でき、宮崎駿と作画監督本田雄さんの安定感を実感し杞憂に終わりました。エンドロールで原画として安藤雅司さんの名前も確認出来て嬉しかったです。

ストーリーについては、宮崎駿独自の脚本を作らず絵コンテで作成するスタイルにあるように、場面場面の意味や世界観のルールは説明をする気がなく難解な部分だらけ。
基本構成はシンプルで行って帰ってくる物語、いつもの宮崎駿印の一度下に落ちてから上に登る話と言えると思います。

本作の肝はやはり、色んなキャラクターや設定が何を表してるかこれまで宮崎駿と照らし合わせてみるディテール的な部分かと思います。

ジブリ汗まみれで語っていたように青鷺はそのまんま鈴木敏夫だし、キリコさんは保田道世さん、インコは信者的なファンかと考えています。
大叔父は今の宮崎駿で間違いないですが、主人公も序盤は父親の設定や境遇から宮崎駿本人と言えそうですが、終盤は宮崎吾朗っぽいなどなど邪推してみたり。明確な答えはないですが、勝手に考えるのは本作の非常に楽しい部分。

ここからはもう妄想の部類ですが、中盤以降のいかにもジブリらしい展開の数々は、意図的に安易なセルフパロディに落としこんでるのではとまで考えてます。ジャムパンのシーンなんかは、こんなものが見たかったのか?と言われているようで、本当に観客に対して意地悪な表現ではないかと。

最後現実に戻ってきて、異世界に行っても大半の人間は覚えてない〜というのは映画を見た大衆を揶揄するようですが、一部の人間は石ころだけでも持って帰ってくれというメッセージは僅かでも希望と救いがあってよかったなと。

あまりに悲しい王国の崩壊と孤独な老人からの遺書のようなメッセージに寂しさを覚えつつも、こんな作品をしがらみもなく自由に作れたことは幸せなことだと思います。
長編は難しいと思いますが、短編はまだまだ作りそうな気がしているので気長に待ちたいです。。
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