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君たちはどう生きるかのシネラーのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
2.0
スタジオジブリ最新作であり、
宮崎駿監督の10年振りとなる監督作を
ようやく劇場鑑賞。
内容や予告映像を全く公開しない
現代で異例とも言える本作だが、
つまらなくないが好きじゃない映画だった。

本作の内容に関しては
触れない感想となるが、
作品の印象としては
大衆から離れた宮崎駿監督の集大成
という印象だった。
随所に過去の宮崎駿監督作の
オマージュが描かれており、
その為の既視感は本作ならではと思った。
アニメーションとしてのクオリティは
冒頭の場面から申し分なく、
階段を駆け上がる場面や群衆の中を
走り抜けていく場面は流石ジブリだと
素直に感じられた。
キャラクターのデザインや
その変貌していく描写に関しても、
ファンタジーな現代アートとして
独特に思う部分が多々あると思った。

しかしながら、
物語は過去のジブリ作品に無い位に
大衆的とは言えない内容であり、
その点での支離滅裂な展開や
間延びに思えてしまう話運びは退屈だった。
あえての説明を省いた作風もあるが、
それを踏まえても人物描写が悪い意味で
淡白で無機質な印象を持ってしまい、
登場人物に対して気持ち悪さを
感じてしまうのも少なくなかった。
大枠のあらすじは理解できても
細かな設定や描写の意味は理解できず、
そこを深く知る為には監督への理解が
必要なのも映画として不親切に思った。
言ってしまえば、
宮崎駿監督が描きたいものを描いた上で
自己投影した内容だったが、
そこが本作の大きな特徴でありつつ
個人的に一番嫌いな部分でもあった。
私自身は好きな監督であっても
面白くなければ酷評する事が
多々ある身ではある為、
その監督の作家性が前面に出た上での
支離滅裂な世界観は狡いと思った。
仮に宮崎駿監督以外の監督が
本作を製作したら、
普通に酷評が多い作品ではあると思う。
その辺りの監督と作品自体の結び付きが
本作は強いだけに、
評価が難しい上に考察しようとしても
興味が湧かない内容でもあった。
本作のアート的な部分は確かに良いが、
一方で大衆から逃げたとも捉えられて
悲しくもあるところだった。
そして、別に大衆向けのエンタメ作品を
望んでいた訳でもないのだが、
それならそれで内容を隠した意味が
騙し討ちなようにも思えて、
本作独特のプロモーションも悪手に
感じられてしまう内容だった。

宮崎駿監督作品を劇場で拝める
嬉しさはあったものの、
それは映画そのものの感動や評価とは
違う部分だと思う鑑賞後の後味だった。
恒例のジブリ飯に関しても、
本作のジャムパンは不味そうだった。
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