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鬼平犯科帳 血闘のシネラーのレビュー・感想・評価

鬼平犯科帳 血闘(2024年製作の映画)
3.0
池波正太郎氏の
生誕100周年記念として製作された
新たな『鬼平犯科帳』を初日に劇場鑑賞。
過去の『鬼平犯科帳』は
全くの未鑑賞でシリーズに触れるのは
初の身だったが、
王道時代劇の物語を楽しみつつ
凡庸にも感じる映画だった。

物語としては、
盗賊達から"鬼の平蔵"と恐れられる
火付盗賊改方・長谷川平蔵の元に
昔馴染みの娘おまさが尋ねて
密偵の役目を願い出る中、
巷を騒がす凶悪で平蔵を憎む
盗賊一味の事件を追う内容となっている。
若き鬼平の因果が結び付いていく
展開は人情味があり、
その鬼平の一強とも言える殺陣は
爽快感ですらあった。
それでいて殺陣シーンにおける
BGMも格好良かった。
又、過去作に触れていないだけに、
松本幸四郎が演じられる鬼平を
初見で見られたのも良い利点だった。
その他の人物も
豪華キャスト陣で固められているが、
おまさを演じる中村ゆりといった
女性キャストが役柄的にも目立ち、
男女の色恋要素が強いという訳ではないが、
その時代の中で足掻いて生きる
女性が印象深かった。

しかしながら、
映画として製作されているだけに
オープニング映像の導入や
後のTVシリーズへの布石は、
かえって安っぽく思えてしまった。
後者に関しては、
劇中でワンシーンしか
その人物描写がないだけに
疑問符がでる要素でもあった。
時代劇らしい所作や
醍醐味でもある殺陣に関しても、
悪い意味で分かり易かっただけに
真新しさも欲しいところだった。
小刻みな回想の導入や
鬼平の同心達といった人物描写不足も
気になるところだった。

人情味を帯びた
王道時代劇で良いとは思ったが、
昨年の『仕掛人・藤枝梅安』が良かった
だけに少し物足りないと感じられた。
数が少なくなった時代劇をあえて
令和の時代に製作するのであれば、
過去作から受け継ぎながらの
アップデートをして欲しいところだった。
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