シネラー

関心領域のシネラーのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
3.0
アカデミー賞授賞式から
気になっていた作品だった為、
公開初日に劇場鑑賞。
隣の畑で行われる残酷な世界を
無関心とする人々は現在の情勢とも
当てはまるだけに心苦しいが、
物語としての起伏の無さやその高尚さで
大衆的には厳しい映画だった。

物語は1945年のドイツ、
アウシュビッツ収容所の隣で
裕福に暮らす一家の日々を描く
内容となっている。
ホロコーストを描かないまま
淡々と描かれていく日常は、
直接的な残酷描写よりも
身近で日常的な異常さを感じるところだった。
子ども達は健やかに過ごすものの、
時折に聞こえてくる発砲音や叫び声に
夜を照らす焼却の灯り、
そういった音をはじめとした
間接的表現が上手いと思った。
絵面としては、建物や通路の全体を
撮りながら人物を配置する
映し方がアート的で美しくもあった。
ラスト5分程の描写に関しては、
淡々としながらも最も心苦しくなっただけに、
世界に対して無関心に生きる事への
警鐘を強く感じるところだった。
そして、未来の為に
過去を知る必要もあると思えた。

しかしながら、
一家にとっての日常が
大きな起伏もないまま描かれる故に、
105分間を集中するのは厳しいところだった。
体調は整えて劇場に行ったが、
序盤と終盤以外は限りなく睡魔と戦っていた。
それでいて展開が読めるだけに、
無関心だった一家の立場が逆転して
当事者となる事で関心を持つ
といった事も予想していたが、
その展開も無かったのは正直言って
拍子抜けに思えるところだった。

物語の設定や題材は興味深いだけに
長々と描いていると感じてしまったのは
残念だったが、
どちらかと言えば短編映画にした方が
心に響きそうな映画だった。
そんな見方をしている時点で、
自分も無関心と言われれば否定できないだろう。
異常な事柄も習慣化してしまえば日常となり、
改めて異常だと気づいた頃には
既に時遅しとならない事を祈ろう。
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