シネラー

胸騒ぎのシネラーのレビュー・感想・評価

胸騒ぎ(2022年製作の映画)
4.0
『関心領域』鑑賞後に急遽
ハシゴ映画をしたくなったので、
全く鑑賞するつもりは無かったが
本作を選択して劇場鑑賞。
なかなかな胸糞映画で
突っ込みどころはあるものの、
思っていた以上に面白くて良かった。

旅先で出会ったパトリック一家と
意気投合したビャアン一家は、
旅行後にパトリック一家からの誘いで
彼らの家へと招かれ、
次第にその価値観の相違や言動に
居心地の悪さと恐ろしい体験をしていく
サイコスリラーとなっているが、
人間関係における嫌な側面と選択が
とても人間味を帯びていて良かった。
当初は良好だった両一家だが、
パトリック一家との価値観の相違に
ビャアン一家は選択を迫られ、
その世間体を気にしての選択を続けた
末に最悪な結末を迎えるのが苦しかった。
しかしながら、人間関係における
相手の嫌な部分を呑み込んでしまう事は
容易に感情移入できるだけに、
気づいた頃には嫌な相手に
主導権を握られているのは恐ろしかった。
パトリック一家の行動は当然として
常軌を逸したものではあったが、
その節々に状況を打開する
選択はビャアン一家に残しており、
その選択を誤った故の顛末だと思った。
生殺与奪の権を他人に握られるとは
正にこの事だと言えるだろう。
昨今に多様されるジャンプスケアや
グロテスク描写で恐怖を与えるのでなく、
人間的なコミュニケーションの中で
嫌な胸騒ぎが続いていくのが
好感の持てる作風でもあった。

物語としては大味なところがあり、
いくら子どもでも書き物や
ジェスチャーで命の危機は
伝えられると思えた上に、
流石にビャアン一家が行動しなさ過ぎで
理解しづらい部分だった。
又、旅行で出会った後に
手紙を出している事を考えても、
警察から普通に辿られそうだとも思えた。
加えて、そこまでグロテスク描写は
多くないのだが、
それでもPG-12というのは中々に
甘めな指定ではあると思った。

胸糞映画なだけに人に薦めづらいが、
個人的には好きなタイプの胸糞映画だった。
ブラムハウスによるリメイク版が
今秋に公開予定との事だが、
楽しみではあるものの下手に大衆化して
本作の良さが損なわない事を祈りたい。
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