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君たちはどう生きるかのmizuumiのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.1
全く予備知識なしで鑑賞。

年若い主人公が大切な人を助けようと数々の危機を乗り越え、最後に世界が崩壊するカタルシスを経て、元の世界に戻って生きていく。その大きな流れは宮﨑作品の型通り。
まだ鑑賞直後で考察はできないけど、宮﨑駿さんがいろんな制約から解放されてこの作品をつくってくれて本当によかったと思った。序盤からその熱量というか情報量というか、凄みに圧倒される。「神は細部に宿る」を実感。
宮﨑作品を観ると、監督と、共に作り上げた人たちの才能と仕事ぶりにまず感動してしまう。作る側の人間は少なからずそうなんじゃないかな。

現実世界のシーンでは、今まで自分が体験したいろんな感覚がありありと蘇ってくる。
例えば避暑地で散歩した池、鬱蒼とした森。陽が傾いてくるとそれらが怖かったこと。日本家屋のお屋敷の磨き込まれた長い廊下を歩く感覚。古い洋館の建具、固くてなかなか開かない窓。日用品の材質や手触りまで伝わってくる。
背景もすばらしくて、いつか美しい日本が失われる日が来たら、未来の人にこれを観てほしいと思った。
異世界の場面ではヴェネツィアの水路からの階段や、古い邸宅の石の床の感じも思い出した。
音響効果もすばらしい。かすかな地鳴りのような重低音が体に残る。

ナウシカは虫、ポニョは魚、今作は鳥。これはポニョと違って子供が観たらトラウマになりそう。
これまでの作品の要素ぜんぶ載せみたいな感じもあり、今度こそ本当に宮﨑駿さんの最後の作品なんだろうかと感じて、なんとも言えない気持ちになった。

なかなか観に行けず情報遮断が大変だったけど、観てる時に俳優さんの顔がチラつくのはイヤだから、がんばって避け続けてよかった。
「ハウルの動く城」はどうしてもキムタクの顔が浮かぶから劇場で観て以来一度もちゃんと観てない。
声優さん特有の演技の違和感がないのはいいことかもしれないけど、人気者を起用する弊害も大きいと思う。
ヒミの演技がひどくて…それだけはすごく残念だった。
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