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悪は存在しないのmizuumiのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.0
映像と音楽がセッションのように響き合っている映画。この映画の起点を知らなかったとしても、そう感じたと思う。音楽以外の録音、音響もすばらしかった。

カメラワーク、音楽の使い方などで観客を揺さぶるシーンが多くあって、冒頭、叙情的なストリングスのテーマ音楽が突然ブツっと切られたのがまずすごく印象的だった。それについてのNYFFでの濱口監督のコメント。「自分は音楽によって観客の感情を高めることに肯定的ではない。彼女の音楽の美しさを最大限活かしつつ、べったり依存し合わないような映像と音楽の関係性を作りたかった。ぶっつり切ることによって音楽と映像の距離が生まれる。また、結果的に観客の聴覚が自然の音に向かうのではないか」まさに監督の思惑通りに感じて観ていた。

終わり方も突然で、放り出された感じはするんだけど、びっくりさせてやったっていうドヤ感がないのは濱口監督の作り手としての品性の現れなのだろうか。
ラストシーンもタイトルもこの映画の1つの要素でしかない。何を意味するか、正解を見つけなくていいと思いながらも、あの霧の中で考え続けている。
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