しの

劇場総集編 SSSS.GRIDMANのしののレビュー・感想・評価

劇場総集編 SSSS.GRIDMAN(2023年製作の映画)
2.9
本編未視聴。キャラ萌え要素がおそらく殆どカットされていて観やすくはあった(それでも気色悪いカットが少し残ってた)が、この世界って実は……という構造に気づく過程や、何より1話ごとに怪獣を倒していく「いつものアレ」の面白さを体感する為には絶対TVシリーズの方が良かったのだろうなと感じた。

怪獣をコントロール不能な他者に対する防衛機制として描き、それに対してグリッドマンが他者として立ち向かう。つまり、特撮バトルを内面世界の闘いとして解釈したのは確かに面白い。だから怪獣もある種のストレス解消法としてある程度は必要な存在なのだ。虚構はただの逃避先ではなく、現実を受容するための訓練場でもある。

……はずなのだが、これだけだと本作の「現実に帰れ」がどのレベルのスタンスなのか判然としない。前述のように、虚構世界を否定しているわけではなく、現実を生きる活力として描こうとしているのは辛うじて分かる。分かるのだが、肝心の怪獣とのバトルが次々とテンポよく過ぎ去っていくのでハリボテ感しかない。虚構を適度に楽しむことは必要なはずなのに、そこから脱出することにどんどん意識が向かっていく。こうなると、作品全体がアカネの更生プログラムくらいにしか思えないので寂しい。せめて怪獣化したアカネを救うのではなく、アカネ含めたみんなで共闘してラスボスを倒す展開にしてくれれば印象が変わったかもしれない。何より、自分は六花の「叶いませんように」に対して、言い過ぎだろと思ってしまった(凄くいい台詞ではある)。虚構と現実を自由に行き来できたほうがよっぽど楽しいし健全だろう。

一応、グリッドマン自体は次元を超越できるものとして描かれているので、その存在についてはどうとでも解釈できるようになっているのがまだ救いではある。しかし、やってることはエヴァのダイジェスト版としか思えず。むしろ、シンエヴァが到達した「相補性」であったり、レディプレが提示した楽しく健全な虚構との付き合い方みたいなものも感じないので、あまり好みの着地ではなかった。
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