田山信行

魔女の香水の田山信行のレビュー・感想・評価

魔女の香水(2023年製作の映画)
-
映像で表現出来ないものに“匂い”がある。
香水をテーマにしたこの映画ではそれを如何に画期的に表現するのか?その観点で観たらば特に発明といえるものはなかったが。香料の名が矢継ぎ早に出てくる会話に少し困惑。4DXならば匂いそのものを効果として出すことが出来るが4DX上映は無し。何故だろう、一番向きな映画だと思うが。

物語上においてはこの香水の香りが非常に上手く機能している。香りが形作られる過程の物語、香りが呼び覚ます記憶や感情。悩み傷付く女性に常に寄り添うものとして描かれ物語が紡がれていく。

運命的な香水との出会いを人生の転機として企業するにまでに駆け上がっていくシンデレラストーリーというとややファンタジックなもっと軽いテイストの映画かと思っていたが、女性の活躍を阻む男性社会の軋轢がリアルに描かれていたり結構ビターなテイスト。ちょっとした恋愛劇もあるがこれもありきたりではない形で描かれていて良かった。現代的な視点がよく取り入れられている。

自分の不遇を他人や社会のせいに他責的に陥らず人生を変えるには自分自身が変わらなければならないと。語られる人生観も決して甘っちょろくない。ちゃんと大人めのヒューマンドラマ。

これまで映画では10代の高校生を演じてきた桜井日奈子の初の大人の女性役。魔女との出会いで夢を見出し葛藤を抱えながら成長していく姿をとても魅力的に演じていた。ステップアップしていくにつれ顔つきもどんどん魅力的に変わっていくのが良かった。今後演じる役の幅も拡がるであろう。

桜井日奈子目当て一本でその他はさして深掘りせずに観ていたら、坂ノ上茜、小西真奈美、梅宮万紗子など好きな役者がけっこう出ていてこれは嬉しいサプライズだった。小出恵介も出ていた。もうメジャーに出て良くなったのか。柔らかな物腰のクズがかなりのハマり役。

まさにタイトルロール通りの黒木瞳の魔女たるや。過去の回想シーンをそのまま演じてても殆ど違和感はない。驚異的。
田山信行

田山信行