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マダム・ウェブの教授のレビュー・感想・評価

マダム・ウェブ(2024年製作の映画)
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この映画を誰もが愛さなくても構わないのだけど、僕は偏狭は価値観の持ち主なので、とりあえず褒めはしないけど、本作のような有象無象の映画は普通に愛せてしまう。

しかし。映画としてはかなり不出来であることは間違いない。
アバンタイトル(導入)も段取り的。
本編に入っても、段取りと説明に終始した展開が続く。
基本的にエピソードが段取り的なので、本作でヴィランとなるエゼキエル(タハール・ラヒム)の、自分が殺される夢に出てくる少女3人を探し出して殺す、という動機が理解不明。
それを守ろうとするキャシー(ダコタ・ジョンソン)と、命を狙われる少女たち(シドニー・スウィーニー/セレステ・オコナー/イザベラ・メルセド)との交流なども深堀りはされないので常に唐突。

日本公開版にあるキャッチコピーな「マーベル初のミステリー」というのは完全なミスリードであるとしても、本作の狙いどころはよくわからない。
敵の存在がわかっている時点でミステリーではないし、予知ができる能力を使ってどう切り抜けるのかは掘り下げ甲斐もあるはずなのに、ドラマとしては非常に淡白。

しかし、逆に言えば「妙に懐かしい」タイプの映画であることは事実で、もう既に何万回も観たであろう王道のハリウッド製SF大作としての大味さが心地よかったりもする。ちょうど同時期公開のアリ・アスター監督の「ボーはおそれている」のように、作家性の赴くままに定型を外して映画自体を大胆に破壊しているような作品で3時間強の上映時間を耐えるよりも、本作のような2時間弱の上映時間の方が退屈はしない。
「娯楽」というにはもはや高額な映画料金と時間のコストを考えれば贅沢品かもしれないが、それでも現実世界のモヤモヤに対してはいい気分転換にはなるぐらいの物語の強度はある気がする。

そう思えたのは、主演の女優陣の魅力の高さが一番大きいのと、映画自体の慣れ親しんだ「緩さ」に妙に波長が合ってしまったからに違いない。
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